社員エンゲージメントの向上は、会社の持続的な成長に欠かせないものと考え、全世界の社員を対象にグローバルエンゲージメントサーベイを実施し、地域・組織ごとの強み・課題を反映した人事諸施策の整備に取り組んでいます。今後も継続的に社員エンゲージメントを把握・分析することで、刻々と変化する課題に対応しながら、社員一人ひとりが、よりいきいきと活躍できる環境の実現を目指していきます。
また、各分野でのプロフェッショナルになるための教育の充実、各階層に求められる知識やスキル習得の支援など、多様な能力開発機会の提供に取り組んでいます。更に、社員の主体的なチャレンジ・自律的なキャリア形成を支援するため、「CDP(Career Development Program)」を2023年度から展開し、各種人事施策と社員のキャリア形成支援の連携・連動を高めていきます。
コマツでは、2021年に国内・海外グループ会社を対象にグローバルエンゲージメントサーベイを開始しました。サーベイにて浮かび上がった課題については、部門ごとにアクションプランを策定し、それに沿って確実に対応を進めています。2023年度には、第二回となるサーベイを実施しており、今後も定期的・継続的にサーベイを実施していくとともに、社員の意志や意欲に目を向けて、自発的・自律的なチャレンジを拡充する施策へ反映していきます。
対象 | コマツおよび国内・海外グループ会社社員 約68,000人(回答率:82%) |
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目的 | 社員のエンゲージメントを定期的に把握、分析し、現状の強みと課題を明らかにしたうえで今後の施策検討の一助とする |
内容 | 社員のエンゲージメントならびにそれに影響を与える「ビジョン(価値観、経営方針など)」「戦略・競争優位性(目標・方針展開など)」「リーダーシップ」「ウェルビーイング(風土・就業環境、満足度・幸福感、心身の健康に関する項目など)」等に関連する60設問 |
回答方法 | オンラインによる匿名調査 |
結果 | 「エンゲージメント」関連スコア グローバル:80 国内:69 (スコアは好意的回答の割合) |
安心して働ける会社・職場づくりは、いかに社員を公正に扱い、処遇するかにかかっています。コマツの人事制度は能力・業績を反映した制度であるため、社員一人ひとりの公平かつ適正な評価を維持・継続していくことが求められます。そのために、管理職全員を対象にした評価者訓練や、評価を受ける側の一般社員を対象にした被評価者教育を確実に実施するとともに、労働組合と共同で、事業所単位で評価委員会を開催し、評価がきちんと行われているか確認をしています。また、管理職・一般社員ともに本人に評価をフィードバックし、社員の苦情処理を受け付ける窓口も設置しています。
概要 | 上司・本人にて面談を通し、期初に業務目標を設定、期末に振り返りを実施。直属上司による一次評価を元に、部単位で評価育成委員会を開催し、複数人による多面評価・相対評価を経て評価を決定 |
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実施頻度 | 一般社員:2回/年、管理職:1回/年実施 上記に関わらず、継続的な上司部下間の対話・フィードバックにより、人材育成や業務プロセスの管理・改善を促進。なお、所属異動や業務内容変更等により目標が変更となる場合は、都度、目標管理面談を実施 |
対象 | 正式社員(一般社員、管理職) |
コマツは、国連の提唱する「グローバル・コンパクト」に署名しており、その中で提唱されている「結社の自由」「団体交渉権」を、企業として尊重すべき基本的人権の一つと考えています。日本には「コマツユニオン」があり、組合員数は約11,300人で全国に8支部があります。なお、当該ユニオンはユニオンショップ制であり、労働組合加入率(組合員数/管理職等非組合員を含む全社員数)は75.1%です。
「コマツユニオン」は、上部団体として「全コマツ労働組合連合会」及び上部団体の産業別労働組合「JAM」に加盟しています。また、国内の連結子会社及び関連会社のうち11社には各々「全コマツ労働組合連合会」に加盟している労働組合があり組合員数は約6,600人です。
また各国においても、労働者の権利に関する法令を遵守し、社員一人ひとり又はその代表者との対話・協議にあたっては、誠実な対応を行っています。
経営環境が急激なスピードで変化し、不確実性が高まる社会環境の中でも、持続的に成長するためには、「従来手法や常識に囚われず新たな発想でモノ・コトを生み出す人材」、「自律的/主体的にチャレンジできる人材」を獲得・育成・処遇し、エンゲージメントを高めていくことが重要です。そのために、各種施策を推進することで、社員と会社の持続的な成長の好循環を実現していきます。
制度・施策 | 内容 | |
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キャリア形成関連 | 資格、技能検定の 取得奨励 |
技能検定(国家検定)に合格した社員に対して、受験費用の一部または全部を補助 |
社内公募制度 | 新しい業務領域へのチャレンジを目的とした「チャレンジ支援型」、家庭事情等から新しいキャリア形成を目的とした「ふるさと人事型」があり、募集部門の定める応募・人材スペックに合致した場合、社員自身による応募を踏まえ組織を横断した異動が可能 | |
留学制度 | 通常では得られない技術や知識を集中的に習得し、業務に反映することを目的とした制度。募集要件に合致した場合、社員自身による応募を踏まえ国内外の大学や研究機関に留学が可能 | |
特別な成果に対する 表彰・報酬制度 |
業績向上賞、プロジェクト賞、個人功労賞、安全衛生表彰、技能功労者表彰、ボランティア表彰など、各種表彰制度 | |
キャリアアップ トレーニングコース |
社内での語学教室の開催や、会社が定める通信教育、各種検定の受験費用を会社が一部補助 | |
Career Development Program(CDP) | 年1回、面談を通じ上司・部下間にてキャリアに関するベクトル合わせを行い、適材適所の推進や社員に適した成長機会の提供、主体的なチャレンジや自律的なキャリア形成を支援 | |
サバティカル休職制度 | 新たな知見獲得を目的とした教育機関等における社員の「社外での学び」を支援するものとして、最大3年間取得可能(社員1人につき、1回までの取得) |
コマツの社員教育では職能別・部門別の育成をベースに、まずはその道のプロフェッショナルの育成を目指します。
全階層で必要とされる知識(コマツウェイ、TQMなど)に関しては、階層別教育での必修科目とし、職能・部門横断的に実施しています。
項目 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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平均時間 | 単独 | 49時間 | 54時間 | 54時間 |
連結 | 40時間 | 46時間 | 49時間 | |
年間費用 | 単独 | 215,000円 | 230,000円 | 236,000円 |
連結 | 72,000円 | 97,000円 | 108,000円 |
重要な伝承すべき匠の技を11分野24技能に分け、分野ごとに技能向上委員会を設置し、新入社員から高度熟練技能者まですべての階層の技能向上活動を計画・運営しています。
製造現場の技能伝承を目的に、2006年度に「マイスター制度」を導入後、各分野の高度熟練技能者がマイスターとして認定され、国内のみならず、海外現地法人や協力企業の技能者指導・育成に従事しています。毎年10月第3土曜日を「技能の日」と定め、「オールコマツ技能競技大会」を開催しています。海外現地法人や協力企業の社員も参加し、互いに研鑽することでコマツグループの技能レベルの維持・向上を図っています。
区分 | 2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
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参加者数 | 360人 |
181人 |
192人 |
うち海外 | 199人(4カ国) |
21人(7カ国) |
32人(9カ国) |
お客さまに納入した商品の稼働をサポートするサービス員は、コマツの「品質と信頼性」を担う大変重要な役割を果たしています。コマツでは専門の部門である「代理店人材育成推進室」を設置し、社内の人材育成と全世界の代理店サービス員の人材育成に力を入れて活動しています。
まず、社内のサービス人材育成・トレーニングプログラムとして、日本人スタッフを育成する「テクノ・サービス・スクール」や、フィリピン人スタッフを育成する「コマツフィリピン」があり、駐在先や部門内のローテーションなどで計画的な育成を行っています。
販売・サービスを担う代理店の人材育成拠点としては、世界15ヵ国21ヵ所にレーニングセンタを設置し、マーケティング・サービス・オペレータ技能にとどまらず、マネジメント層の育成や改善活動のトレーニングを行い、代理店の能力向上をサポートしています。
トレーニングセンタで実施する人材育成プログラムは、その内容に応じて、コマツ本体が企画または支援を行っています。サービスや商品の基礎コースについては、コマツ本体がカリキュラムや教材を提供し、現地(現地法人・代理店)で実施しています。また、より高度な、マネジャーや上級サービス員などを招日して実施するコースや、専門的な技能を有するトレーニングセンタ(マザートレセン)が提供する技能教育もあります。これらのトレーニング環境を整えた上で、知識レベルテストを行って代理店の戦力レベルを把握し、販促活動と一体となった実践的なトレーニングを展開しています。
2023年度はオンライン研修と対面のハイブリッド化も進みましたが、全世界で400回以上の教育を実施し、約5,000名以上の代理店スタッフが受講しました。
TOPICS
シミュレータの開発
事故発生のリスクが常に伴うお客さまの現場では、安全性の確保、オペレーター(運転手)の育成、そして生産性の最大化が非常に重要な課題であり、コマツはこの課題に対して、シミュレータを活用することで、現場の課題解決支援に取り組んでいます。その中で、代理店人材育成推進室では、実際の機械と同様に設置されたペダルやコントローラーを用いてVR(バーチャルリアリティー)空間でトレーニングすることが可能なシミュレーターを開発しました。このシミュレータを活用し、オペレーターを対象としたトレーニングを提供することで、お客さまや代理店の人材育成を図り、現場の安全性の向上や、施工の効率化等を支援しています。
KPCでのフィリピン人エンジニアの育成
KPC(コマツフィリピン株式会社)は、コマツ人材開発センタを前身として、フィリピンでの拠点設立から、16年目を迎えることになりました。フィリピンで理工系大学を卒業したフィリピン人学生を採用し、6年かけて世界中で活躍できるエンジニア(グローバルエンジニア)へと育成しています。直近では、人材育成機能の強化を目的に、2021年に新研修施設を設立しました(写真下)。新しい研修施設を活用し、今後もより一層充実したトレーニングを行い、人材育成を通じた事業の拡大に鋭意取り組んでいます。