材料や部品、コンポーネント等のサプライヤである協力企業は、当社のモノ作りを支える重要なパートナーです。コマツは、協力企業の皆さまとの相互信頼関係の下、双方向の努力を通じて「Win-Winの関係」構築を目指しています。事業活動のグローバル展開に伴い、当社のサプライチェーンも全世界に広がっていますが、サプライチェーン全体におけるCSR浸透への昨今の社会要請の高まりを真摯に受け止め、協力企業に対する積極的なCSR支援を通じて、グローバルでのCSR調達実現に取り組んでいます。
コマツの調達方針は、「対等なパートナーである協力企業との切磋琢磨を通じたWin-Winの関係を目指す」という理念の下、SLQDC(S:安全労働衛生 L:コンプライアンス Q:品質 D:生産能力 C:コスト競争力)およびESGの観点から公平かつ公正に発注先の評価・選定をすることです。
発注先の選定と継続的取引の検討に際しての評価基準として、コマツは「CSR調達ガイドライン」および「グリーン調達ガイドライン」を制定し、当社ウェブサイト上に公表しています。協力企業各社への周知を努めるとともに、各社に事業活動において本ガイドラインの主旨に沿った対応をお願いし、必要な支援・指導も実施しています。支援・指導には、以下の事例が含まれます。
「CSR調達ガイドライン」は、サプライチェーンを通じたCSR活動全般の推進を図るため、2011年に制定・公表しました。本ガイドラインは、ISO26000や国連グローバルコンパクトの10の原則等の国際的なガイダンスに沿って、当社の行動基準やコマツウェイの考え方も織り込みながら、当社が協力企業各社に取り組んでいただきたい事項をまとめたもので、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、環境、人権労働、企業倫理及び社会貢献・地域との共生など、ESG全般の諸課題を幅広く、その内容としています。本ガイドラインの遵守努力は協力企業との取引契約の中にも織り込みしています。万一協力企業において本ガイドラインに対する明白な違反行為・状況が判明し、かつ相当期間内に適切な是正措置がとられない場合には、当社との取引を一時停止または解除することもあります。
コマツは『コマツの行動基準』(1988年制定)に則り、グループが一丸となってコンプラインスを徹底するとともに、社会と共存して持続的に発展することを目指しCSR(企業の社会的責任)を重視する経営を推進してまいりました。
この一環として、コマツは、国連が提唱する「人権、労働、環境、腐敗防止」に関する自主行動原則である『グローバル・コンパクト』に参加(2008年11月)し、国際社会が直面する重要課題に対するグローバル企業としての姿勢を表明しています。
こうした中で、社会的責任に関する国際的なガイダンスである『ISO26000』が2010年11月に正式発行されました。コマツは、『ISO26000』に示された各課題に誠実に対応するとともに、社会的責任がバリューチェーン全体で推進されるよう、リーダーシップを発揮する所存です。
『コマツの行動基準』には以前から、協力企業をコマツグループの重要なパートナーとして、「長期的で安定した信頼関係の確立に誠心誠意努力する」ことを明記していましたが、2011年4月の改訂において、「協力企業に対しても『コマツの行動基準』の精神に沿った行動をとるよう働きかける」こと、及び取引先の選定要素に「ビジネス社会のルールの遵守状況(コンプライアンス」が含まれること、を追記しました。
今回提示する『CSR調達ガイドライン』は、上記の基本方針に沿って、コンプライアンス及びCSRに関して協力企業各社に取り組んでいただきたい事項を列挙したものですが、2011年の制定以降、時代の要請に応じた新たな課題への対応も順次織り込み、改訂しています。是非、このガイドラインを踏まえて、各社が経営理念に織り込み、CSRを着実に推進いただくようお願いするとともに、各社がその仕入先に対しても同様の依頼をしていただくことを期待します。
2021年4月1日
コマツ調達本部長 千田悟郎
(2011年8月30日制定、2019年4月1日改訂、2021年4月1日改訂、2024年4月1日改定)
(1)様々なリスクに対応するための体制を構築すること
(2)適法かつ透明性の高い経営上の意思決定プロセスを構築すること
(3)適正な会計、税務処理及び決算を行うこと
(4)ステークホルダー(顧客、株主、取引先、従業員、地域社会等の利害関係者)とのコミュニケーションを重視すること
(5)異常発生時に経営トップに情報が迅速に報告され、迅速かつ的確な対応がとれるようにすること
(6)積極的な情報開示を通じて、社会に対する説明責任を履行すること
(7)顧客・取引先・従業員の個人情報を適切に取り扱うこと。自社及び取引先から提供された業務上の機密情報に対し、外部漏洩、紛失、滅失することなきよう適切な情報セキュリティー対策を講じること
(8)大規模な自然災害や感染症拡大などの緊急事態下でも、適切な初動対応により従業員の安全を確保し、かつ事業を早期に復旧し、顧客への供給責任を果たせるよう、実効性のあるBCPを構築すること
(1)事業活動を行う国と地域において法令及びビジネス社会のルールを遵守して事業活動を行うとともに、国際基準の尊重にも努めること
(2)経営トップの主導により企業のルールとなる行動基準を制定し、コンプライアンス最優先の企業風土を醸成すること
(3)自社の規模と特性に応じて、自社及び役員・従業員の不正予防と問題発生時の早期対応(内部通報制度など)を含むコンプライアンス体制を構築すること
(1)製品安全に関する法令を遵守し、お客さまに安全と安心頂ける製品・サービスを提供すること
(2)提供する製品・サービスの品質とコスト競争力を維持するとともに、納期を確実に守り、安定的に供給すること
(3)品質管理体制を構築し、その維持改善に努めること
(4)常に技術開発に努め、革新的かつ安全で環境に優しい製品・サービスを提供すること
(1)事業活動により生ずる環境への負荷の低減の努力を継続すること
(2)提供する製品に含有される化学的物質を適正に管理すること
(3)ISO14000シリーズ、「エコステージ」等の環境マネージネントシステムを構築すること
(4)地域の人々の健康、生活環境に影響を与える排気、排水、廃棄物、騒音、振動等は関連法令に従い、適切に管理、処理すること
(1)結社の自由及び団体交渉権を含めた人権を尊重すること
(2)直接・間接を問わず児童労働や強制労働に関与しないこと
(3)あらゆる雇用の局面において差別とハラスメントのない職場を実現すること
(4)適正な賃金の支払いと適切な労働時間管理を通じて、労働者の権利を尊重すること
(5)労働安全衛生のための体制を経営トップの主導により構築し、安全で健康に就業できる職場環境を実現すること
(6)公平で公正な人事制度を確立するとともに、人材の育成と教育にも意を用いること
(7)経営トップと従業員とのコミュニケーションの向上に配慮すること
(8)環境と人権が複合した社会問題を引き起こす可能性のある原材料(紛争鉱物・森林破壊等)使用を避けること
(1)関係法令を遵守し、自由かつ公正な競争と取引を行うこと
(2)他者の知的財産権を尊重し、その侵害防止に取り組むこと
(3)国内外において、公務員及び利害関係者(顧客、取引先、その他のビジネスパートナー)と不適切な金品その他の利益の授受を行わないこと
(4)関係法令を遵守し、適正な輸出入取引(物品・技術)を遂行すること
(5)反社会的な勢力・団体とは一切関係を持たないこと
(6)利益相反となる取引または可能性のある取引を行わないこと
(1)自社の経営理念に基づき社会貢献に取り組むとともに、従業員のボランティア活動を支援すること
(2)事業活動の基盤となる地域社会との共生を重視し、地域の発展を積極的に支援すること
(1)自社の取引先に対しても、本ガイドラインに規定する事項の順守を働きかけ、サプライチェーン全体へ浸透できるよう努めること
「グリーン調達ガイドライン」は、「CSR調達ガイドライン」に含まれている環境関連の課題について内容を補足・追加したものです。コマツは1992年に「コマツ地球環境基本方針」を制定し、持続可能な社会実現のため、環境に配慮した事業活動を行うことを宣言しました。
本ガイドラインを通じて、生産の重要な要素である原材料や調達コンポーネント・部品において、環境に配慮したグリーン調達を優先的に進めるとともに、協力企業各社に対し環境マネジメント及び環境負荷低減活動への取り組みを促しています。
また、本ガイドラインに関連して、当社のサプライチェーンにおける以下の調査を実施しています。
コマツはCSRの観点から、コンゴ民主共和国及びその周辺諸国から産出される錫・タンタル・タングステン・金(3TG)等の「紛争鉱物」を使用しないとの方針を「グリーン調達ガイドライン」にて協力企業各社へ通知するとともに、2011~2014年にかけ、日本自動車部品工業会の調査テンプレート(JAPIAシート)を用いて、協力企業から供給される部品毎に対象鉱物の含有量及び原産国(川上の精錬業者の特定)調査を実施しました。その結果、当社製品における対象鉱物の使用量はごく僅少であり、また「紛争鉱物」の使用の実績はないと判断しました。以降は、CSRに関するSAQアンケート調査や人権デユーデリジェンス調査等にて、本件に関する設問を入れてフォローを継続しています。
今後とも万一、当社または協力企業にて「紛争鉱物」の使用が判明した場合は速やかに、RMIの認証する精錬業者からの調達に切り替えるよう取り組みします。
REACH規制とは、EUにおける化学品の登録・評価・認可及び制限に関する規制です。EU域内で対象化学品を製造、またはEUへ対象化学品を含有する完成製品を輸出する企業には、本規制への対応(対象物質の年間使用が一定量を超える場合の登録・認可申請等)が義務付けされます。規制対象となる物質は、特に製品に含有される高懸念物質(SVHC)が年々追加指定されています。コマツは、紛争鉱物に対する対応と同様に規制対象物質について、協力企業各社に対しJAPIAシートを用いて部品単位での含有量を調査し、その結果をEU当局へ報告しています。さらに、協力企業各社と連携して、SVHCの使用削減や安全性の確認された代替物質への置換を進めています。
コマツは商品の需要地で生産することを生産の基本方針とし、建設・鉱山機械に関係する58工場のうち46工場を海外に展開しています。 コンポーネント、部品、材料等については、それぞれの特性に応じて設定した生産・調達方針に基づき、積極的に現地調達も進めています。特にB、Cコンポに関しては、為替変動やFTA・EPA、輸出入規制などの貿易環境の変化に柔軟に対応するため、各地域間のクロスソーシング(相互供給)を拡大することで、グローバルでの最適調達実現を目指しています。
建設・鉱山機械用コンポーネント・部品の生産及び調達方針
区分 | 定義 | 生産・調達方針 | 部品例 |
---|---|---|---|
Aコンポ | 商品機能を左右する、差別化のキーコンポーネント | 日本での開発・生産を維持し、全世界へ供給 | エンジン、トランスミッション、アクスル、油圧機器、電子機器など |
Bコンポ | 機能、品質、投資の観点から、認定されたサプライヤからの集中購買が必要なコンポーネント | グローバル2~3極からの最適調達 | キャブ、フロア、クーリング、足回り、シリンダ、高圧ホース、タイヤ、リム、オペシートなど |
Cコンポ | 技術的難易度が比較的低く、組立工場の近辺で生産・調達することが望ましい部品 | 現地調達 | 厚薄板金部品、機械加工品、 鋳鍛品素材など |
2023年度のコマツグループの建設・鉱山機械事業での調達金額の内訳は下記の通りです。
コンポーネント区分別調達金額比率
原産地別調達金額比率
コマツは、建設・鉱山機械事業において、全世界で約2,700社の協力企業(1次サプライヤ)の皆さまと取引をいただいています。その中から、ESG、国、業界、製品固有のリスクとビジネス関連性を考慮したスクリーニングを通じて、重点企業を選定しています。重点企業の中でも、トップの経営理念含めた経営体質、当社との取引におけるSLQDCのパフォーマンス状況(開発提案力含む)、供給する品目の調達戦略上・技術上の重要性、当社との取引歴と取引規模等の観点からの評価を通じて、コマツにとって特に重要とみなされる協力企業を選抜して「コマツみどり会」を結成しています。コマツみどり会は現在、日本、中国、タイ、北米、欧州の5地域で展開し、その会員企業からの調達金額は全調達金額の74%(2023年度)に達しています。各地域のみどり会では、各地域の当社生産工場と連携して地域の特色を生かした活動を推進するとともに、定期会合を通じて当社事業に対する理解の促進、当社幹部と会員企業トップ間の意思疎通の活性化を図っています。例年11月に日本で開催されるみどり会経営者懇談会には、日本のみならず多くの海外会員企業にも参加いただき、当社経営層からの事業概況並びにグローバル調達方針と重点活動についての説明を実施しています。また、会員企業の競争力向上支援として、日本と中国においては、会員企業をその業種・供給品目毎にグループ分け(部会)し、安全、環境、先端生産技術などの共通テーマを選定のうえ、当社と協力して改善活動を推進しており、改善事例は同一グループの企業間で情報共有し、水平展開を進めています。
重要なサプライヤの構成内訳
地域 | 社数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
合計 | 外注品※1 | 購入品※2 | ||||||
出資会社 | 当社依存度高 | 出資会社 | 当社依存度高 | 大手企業 | 商社・材料 | |||
みどり会 | 日本 | 156 | 6 | 87 | 2 | 7 | 43 | 11 |
中国 | 63 | 2 | 37 | 1 | 4 | 14 | 5 | |
タイ | 32 | 19 | 1 | 10 | 2 | |||
北米 | 44 | 1 | 15 | 1 | 19 | 8 | ||
欧州 | 40 | 4 | 34 | 2 | ||||
小計 | 335 | 9 | 162 | 4 | 12 | 120 | 28 | |
非みどり会 | 日本 | 1 | 1 | |||||
北米 | 1 | 1 | ||||||
欧州 | 1 | 1 | ||||||
インドネシア | 4 | 1 | 1 | 2 | ||||
インド | 18 | 4 | 14 | |||||
ベトナム | 4 | 3 | 1 | |||||
フィリピン | 1 | 1 | ||||||
小計 | 30 | 2 | 8 | 0 | 1 | 17 | 2 | |
合計 | 365 | 11 | 170 | 4 | 13 | 137 | 30 |
重要なサプライヤの区分と内訳
区分 | 社数と比率(上位社数は下位の内数) | 調達金額比率 | |||
---|---|---|---|---|---|
1 | 一次発注先の合計 | 2,709 | 100% | 100% | |
2 | 重要なサプライヤ※ | レベル3 | 365 | 13% | 74% |
3 | レベル2 | 198 | 7% | 63% | |
4 | レベル1 | 15 | 1% | 8% |