燃費性能の優れた製品を提供し、製品からのCO2排出を削減しています。例えば、2008年にコマツが世界で初めて市場導入したハイブリッド油圧ショベルがこれに当たります。
これらのハイブリッド建設機械は日本の国土交通省より「低炭素型建設機械」として認定されています。
低炭素型建設機械認定機種:HB215-3、HB205-3、HB335-3、HB365-3など計16型式(2020年4月現在)
また、燃費性能の優れた建設機械として、国土交通省の「燃費基準達成建設機械」に、ブルドーザー「D155AX-8」、油圧ショベル「PC300-11」、ホイールローダー「WA470-8」など、19型式が認定されています。(2020年4月現在)
機械稼働管理システム「KOMTRAX」は、世界中で稼動する建設車両から稼働情報・健康情報を自動で収集し、遠隔での車両の監視・管理・分析を可能にするべく、コマツが開発した仕組みです。集められた情報は、インターネットを通してお客さまに提供するとともに、機械の稼働時間、仕事時間、更には使われ方、燃費を「見える化」し、改善点を提案します。このようにして、お客さまでの燃料消費量の改善(=CO2排出量の削減)をサポートしています。
コマツは、2013年に世界で初めて自動ブレード制御機能を搭載したICTブルドーザー「D61PXi-23」を北米・欧州・日本に市場導入しました。さらに2014年には世界初のセミオート制御機能を搭載した油圧ショベル「PC210LCi-10」を北米・欧州に、「PC200i-10」を日本に市場導入しました。ICT油圧ショベルを使った社内テスト施工のデータを元に試算した結果、「PC200i-10」での盛土法面整形作業では約30%の燃料消費量の削減が確認されました。また、ICTブルドーザーを使用した社内テスト施工のデータを元に試算した結果、「D61PXi-23」での敷均し作業では約25%の燃料消費量の削減を確認でき、ICT油圧ショベルと同じくCO2排出量を削減できることが分かりました。
コマツでは、これらのICT建設機械と、ドローンや3Dスキャナーを使った現況地形計測など、工事現場の作業効率化とプロセスの「見える化」を進める「スマートコンストラクション」を展開しています。
コマツでは、製品(建設機械、鉱山機械、林業機械)稼働時に排出する作業量当たりのCO2を2010年度比で2030年度までに50%削減することを目標としました。
この進捗を評価するために、その年の製品性能と、基準年(2010年度)当時の製品の性能を比較し、燃費、作業効率の改善によるCO2削減貢献効果を見積もりました。その結果、2019年度の製品では、基準年にくらべ、14%のCO2削減が達成されました。
第三者保証
製品稼働時CO2排出指数
Joy 18HDおよび22HD LHDは、革新的なKESS(運動エネルギー貯蔵システム)とともに、エネルギー効率の高いSR*2電動テクノロジーを利用して、クラス最高の生産性、低燃費、低排出量を実現します。
SR電動システムは、機械を推進するホイールモーターに効率的に電力を供給します。また、ブレーキをかけると、従来、熱として消費されていたブレーキエネルギーがKESSユニットに貯蔵され、それと同時に電気的なブレーキとして作用します。
KESSに貯蔵されたブレーキエネルギーは、必要に応じて駆動システムに戻すことができます。これにより、エンジンの負荷が軽減され、燃料消費量とCO2排出量が30%以上削減されます。
コマツは、最新技術を随所に織り込み、燃費効率を大幅に向上したホイールローダー「WA470-10」を2020年2月より発売しました。無段階変速可能なハイドロスタティックトランスミッション(HST)と高効率なメカニカルトランスミッションを組み合わせた、コマツハイドロリックメカニカルトランスミッション(KHMT)を搭載し、制御には、新開発のKHMTコントロールシステムを採用しました。車体の負荷を総合的に判断し、加速、牽引力、作業機力などがさらに適切となるように、エンジンパワー制御および、走行系、作業機系などへのパワー配分制御を自動的に行います。この制御により、エンジンを低回転かつ高効率な状態に保つことで、燃費の向上を実現しました。さらに、新形状バケットなどによる作業量向上も加わり、燃費効率[ton/L]を従来機(WA470-8)に比べ約30%向上させ、環境性能・経済性ともに優れた性能を発揮します。
エンジン定格出力(ネット) | 216kW |
---|---|
運転質量 | 24,830kg |
バケット容量 | 3.6-5.2m |
コマツは、300tクラスのマイニング油圧ショベルの新機種PC3400-11M0(バケット容量 18m3)を市場導入しました。当該機は、新規に自社開発した、超大型コントロールバルブを搭載し、油圧システムを電子制御化しています。
この超大型コントロールバルブは、内部構造を工夫し、大流量時の圧力損失を大幅に低減しました。また、油圧システムの電子制御化により、車体の稼働状況に合わせて油圧機器を最適に制御することが出来、良好な操作性を実現するとともに、油圧ロスを大幅に低減しました。これらにより、現行機(PC3000-6)に対して22%の燃費効率改善を達成しています。(その内、油圧システムによる燃費改善は4.7%)
上記コントロールバルブ以外にも、メインポンプ、旋回モータ、走行モータや油圧シリンダなどの主要機器は全て自社開発、自社生産しており、コマツの油圧機器の伝統である”高品質”と”信頼性”によりマシンのダウンタイムを削減し、鉱山現場の生産性向上に貢献しています。
株式会社KELKは、周囲の環境からの微小な熱エネルギーを収穫する熱電エネルギーハーベスティング(熱電EH)を電源とした、世界初のFFT(高速フーリエ変換)解析機能を搭載する熱電EH振動センサデバイスの販売を開始しました。
熱電EH振動センサデバイスは、高性能熱電発電モジュールKELGEN(ケルジェン)による自己発電で動作し電池や外部電源を使用しないため、電池の廃棄を無くし、外部の電力を必要としません。また、配線工事が不要でイニシャルコストとランニングコストを削減する省エネルギー製品です。
設備故障の原因の約5割は回転機器で発生しており、回転機器の劣化の初期段階で振動の異常が観察されます。継続的に設備の状態を測定することにより、異常を早期に検知し、故障に至る前に適切なタイミングで保全を行う予知保全は、設備故障による機会損失と、修繕費および保守用部品在庫の削減に有効と期待されています。
コマツは気候変動問題に対応するため、事業所における研究・開発や生産活動に使用する電力・燃料ガス・燃料油など全てのエネルギーを対象に、生産金額当たりのCO2排出量を指標として、CO2排出量原単位の低減を推進しています。
2019年度からは、新たにグローバルで中長期の目標を設定し、改善活動を推進しています。
2019年度は建設・鉱山機械の需要減に伴い生産量が減少し、国内外ともCO2排出量は減少し、内製金額当たりの原単位も前年度に比べて大幅に減少しました。
CO2排出量原単位はCO2排出量の多い鋳造・鍛造工程における省エネと太陽光発電施設の増設やグリーン電力の購入により、内製金額当たりのCO2排出量原単位が2010年度比31.5%減と2019年度の目標(24%減)を達成しました。
また、再生可能エネルギーの使用率は欧米を中心としたグリーン電力の購入により10.7%まで向上し2019年度の目標(10%以上)を達成しました。
2020年度以降も鋳造・鍛造工程のCO2削減プロジェクトを中心にCO2排出量原単位の低減を図ります。
項目 | 2018年度 | 2019年度 | 2030年目標 |
---|---|---|---|
CO2排出量原単位(対2010年度比) |
79.5 |
68.5 |
50 |
再生可能電力使用率 |
5.3% |
10.7% |
50% |
《国内》
《海外》
第三者保証
CO2排出量
再生可能電力使用率
コマツアンダーキャリッジインドネシア(KUI)では建設機械足回り部品を生産しています。これまで、生産性向上活動、及びユーティリティ設備の効率改善といった様々な省エネ活動を推進してきました。2019年度には2010年度比で生産原単位当たりのCO2排出52%削減を達成することができました。KUIでは2013年度から社員一丸となったTPM活動を推進し、その効果がCO2削減にも寄与しています。例えば工場で最も多くのエネルギを使用している鍛造エアハンマー7台の動力源となるコンプレッサについては、エア漏れ撲滅といった基本的な活動からスタートし、2018年度からはエア配管系統の見直しや圧力変動に追従させるためのインバータ装置の導入などを実施し、約500 トンのCO2削減を達成しました。その他にも鍛造熱処理工程の熱源を軽油から環境負荷のより小さい都市ガスに切り替えるなどの活動も実施しています。現在は2019年度より新たに日本及び中国工場とのCO2低減プロジェクト活動を開始しており、鍛造工程を中心に更なる低減活動を進めています。
(貨物重量当たりCO2排出量原単位:kg-CO2/トン)
コマツは2011年より海外主要10事業所について輸送CO2の把握改善に着手しました。2006年より実施の国内と合せ 全 25事業所のグローバル連結ベースでの輸送改善を実施しています。
国内は生産工場に隣接した、金沢及び常陸那珂港利用率向上による輸送距離削減 、内航船、鉄道利用による長距離陸上輸送の改善(モーダルシフト化)を重点継続実施しております。
第三者保証
コマツはモーダルシフトを強力に推進しています。2019/4よりの敦賀港⇒博多港航路(RORO船)新設を受け、粟津工場製品の九州北西部への輸送経路を再検討し、ドライバ負荷の軽減、CO2発生量改善が大幅に見込めるため、福岡西部、佐賀、長崎、熊本北部の経路を敦賀港経由に切替えました。(福岡県東部、山口県は大阪南港⇒新門司港を使用)
CO2改善効果;72.4t/年 (国内輸送CO2排出量の0.35%)
第三者保証
コマツは、生産/販売・サービス等で排出するCO2のほかに、サプライチェーン全体でのCO2排出量を把握し、その削減を目指しています。そのためにScope3 CO2排出量を毎年算定しています。
Scope1:コマツから直接排出するCO2(例:燃料燃焼時のCO2排出)
Scope2: コマツでのエネルギー利用に伴うCO2の間接排出(例:購入電力の使用に伴う発電時のCO2)
Scope3:その他の間接的なCO2排出
(例) 上流;購入品の製造時に発生するCO2 など
コマツ;通勤、出張時に交通機関が発生するCO2 など
下流;建設機械などの製品使用時のCO2排出 など
コマツは、自社の持つKOMTRAX(コムトラックス)の実データをもとに、報告年度に生産した製品がライフに渡る稼働時に発生するCO2排出量(Scope3 カテゴリ11)を把握しました。
算定の仕方は次の通りです。
顧客使用に伴う排出量の算定
(1)各機種ごとに下記を計算
各機種ごとのライフに渡るCO2排出量
=(報告年度生産台数)×(燃費;L/kWh)×(エンジン出力;kW)
×(設計エンジンライフ;これを製品寿命とする;h)×(CO2換算係数)
※燃費(L/KWh)については、代表機種でKOMTRAXにより集計した。
(2)上記(1)を各機種で計算し、合計
その他、残りの14カテゴリについても、概略のCO2排出量を算定し、下記の円グラフになりました。
以上の結果から、製品使用時の排出量が総排出量のおよそ90%を占めていることが分かります。
これらのことから、燃費の良い製品はCO2削減に大きな効果を示すということが分かります。
コマツは、ハイブリッド建設機械(燃費25%向上)やダントツ商品(燃費10%以上向上)の開発やICTを駆使したスマートコンストラクションに注力しています。
また、参考までにLCA※1(Life Cycle Assessment)で把握した結果は、下記の円グラフです。
【参考】Scope1,2,3の円グラフ