2022年からKomVision人検知衝突警報システムを搭載したPC490LC-11
コマツは、事業戦略を通じて目指すありたい姿を「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」と定義しています。なかでもコマツの商品が稼働するお客さまの現場における安全性向上は重要な社会課題であることから、当社では安全な商品や安全性を向上するソリューションなどの「安全装置の企画・開発・導入」を社会課題解決KPIの一つと位置づけ、開発に積極的に取り組み続けています。
コマツは、2013年に作業機の自動制御を実現したICTブルドーザーを、2014年にはICT油圧ショベルを市場導入しました。スマートコンストラクション®による土木施工現場の生産性向上だけでなく、「丁張り」といわれる人手の測量工程を不要にすることで、現場の安全性向上にも寄与しています。
鉱山機械の分野では、無人ダンプトラック運行システム(Autonomous Haulage System、以下AHS)を他社に先駆けて市場導入しました。通信衛星や各種レーダー、センサーなど、最先端の技術を組み合わせ、人が介在しない、安全で生産性の高いクリーンな現場を追求するお客さまの要望に応え続けています。
コマツは、車載カメラと車体制御システムを組み合わせ稼働中の車両への人の接近を検知・警告する「KomVision」を自社開発し、2019年から油圧ショベルに標準搭載し、以降、ダンプトラック、ホイールローダー、モーターグレーダーには障害物検知システムを搭載してきました。
2024年12月に発売開始した油圧ショベル「PC200i-12」ではKomVisionをさらに進化させ、人以外にフォークリフトや自動車などの物体を感知する「人+物検知モード」を追加しました。また準ミリ波レーダーを搭載し感知精度も大幅に向上しました。
当システムは、車両の走行・旋回中、付近の人や物を検知した際に車内モニターに表示して注意を促すとともに車体を制御し、低速走行中には動作を停止させます。これらの機能により、稼働現場における車両と人や物との衝突事故を抑止します。
新型ホイールローダー「WA380-8」「WA475-11」にオプション搭載したシステムでは、後進時に人の接近や荷物、作業車両の存在を検知するとオペレーターに注意を促し、衝突の可能性が高まった際は自動的にブレーキを作動させ、車両を減速または停止させます。当システムはホイールローダー特有の構造・使われ方に対応し、ステアリング角度に応じた進行方向を予測検知するほか、上り傾斜地でのかき上げ作業などの際、車両後部に接近する地面の警告は自動で無効にする機能も備えています。
本システムは、あらゆる条件で衝突を軽減する装置ではありません。性能には限界があります。
・つり荷走行
・急斜面での作業
・滑りやすい路面や地盤の柔らかい現場での作業
油圧ショベル「PC200i-12」に新たに搭載した「ジオフェンス」は、車体周囲に仮想の作業制限エリアを設定し、作業中、車体や作業機が制限範囲に近づくと自動で車両が停止するシステムです。車体の標高情報も取り込むため、水平移動だけでなく盛土の上に移動しても制限エリアを設定し直す必要はありません。これにより頭上の電線や住宅地の壁面、地下配管などを破損する危険を回避するとともに、監視要員の配置も不要となり、現場の安全性がさらに向上します。
建設・鉱山機械は傾斜・起伏・軟弱地など不安定な現場で稼働することが多く、また作業に応じて車体の重心が変わることから、転倒リスクの低減は安全性向上にとって重要な課題となります。
2023年に発売した「CD110R-3」には、全旋回式クローラーキャリアとして業界初となる、転倒リスクを低減する安全機能を搭載しました。搭載した慣性計測装置で車体の傾斜角を計測し、急傾斜を検知すると警告します。転倒警報以外にも過積載警告機能や、ボディ(積載部)下げ忘れ警告、モニター画面表示を含む周辺視認性の強化など、安全な現場作業を実現する機能を多数搭載しました。
また新型油圧ショベル「PC200i-12」に搭載した転倒警報システムは、車体の重心を演算することにより、作業機の作動状況も含めた車両転倒のおそれを判定し、警報を発信する機能を備えています。
ホイールローダー「WA380-8」にも、傾斜地での低速作業時、車両転倒の危険をブザーや表示灯で通知する警報システムを標準搭載しました。
鉱山・砕石現場で長時間稼働するダンプトラックの安全サポート機能として、ダッシュボードに設置したカメラでオペレーターの顔や姿勢を判定し、居眠りや脇見、不適切な運転姿勢が感知された場合、警報音声とブザーでお知らせする機能です。長時間運転が続く場合にも状況確認のための音声を発信し、カメラに手をかざす操作をしないと休憩を促す機能も備えています。
コマツは2023年4月から、日本貨物鉄道株式会社との共同開発を通じ、貨物鉄道輸送で多用される大型コンテナ積み替え作業の負荷軽減・効率化に取り組んできました。そして2024年12月から、全国15カ所の貨物ターミナルに「ガイダンス・セミオート機能」を搭載したフォークリフト21台の導入を開始しました。
ガイダンス機能は、複数の車載カメラにより、オペレーターが直接視認しにくいフォークの高さや中心位置を運転席内のモニターに表示し、荷役作業をサポートします。またフォーク上面の傾斜を表示するインジケーターや、コンテナの抱え込み不足を警告する機能でオペレーターをサポートします。
さらにセミオート機能は、LiDAR(レーザー)位置認識センサーと独自の荷役対象認識技術により、アクセル操作だけでフォークリフトをコンテナに正対させ、フォークを20㎝程度まで自動で差し込むことが可能です。
「ガイダンス・セミオート機能」の導入により、フォークリフトオペレーターの作業負担を大幅に軽減するとともに、周辺コンテナへの接触やコンテナ落下といった事故の防止が期待できます。さらに近年課題となっている熟練オペレーターの不足にも対応するものと期待されています。