2022年からKomVision人検知衝突警報システムを搭載したPC490LC-11
イノベーションは、環境性能や経済性など、さまざまな価値を生み出します。その中で私たちが何よりも優先しているのは「安全性」です。
安全な商品の提供に始まり、究極の安全性といえる無人運行システムまで、イノベーションを駆使して、安全の面からも、お客さまの価値創造を追求しています。
安全性の高い、最新の国際的な規制・標準に対応した商品をお客さまに提供することは、メーカーとして最優先の責務です。中期経営計画において、当社は「安全で生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場をお客さまと共に実現する」という目指すべき姿の実現に向けて、ダントツ商品(製品の高度化)、ダントツサービス(稼働の高度化)、ダントツソリューション(現場の高度化)が三位一体となり、現場の安全性を含むESG課題解決と収益向上の好循環を生み出す、新たな顧客価値(ダントツバリュー)の創造を目指しています。
コマツは、作業機の自動制御を実現したICTブルドーザー(2013年)およびICT油圧ショベル(2014年)を市場導入しました。ICT建機はオペレーターの経験を問わず、熟練者のような高い精度の施工を可能にします。これにより、従来必要とされた補助作業員が不要となり、また「丁張り」という人手による工程が不要となるため、現場の省人化が実現され、安全性が向上します。
さらに究極の安全を実現するのが「無人運行システム」です。オーストラリアやチリ、カナダの大型鉱山で本格稼働している、無人ダンプトラック運行システム(Autonomous Haulage System、以下AHS)は、300トンもの土や鉱物を運搬する超大型ダンプトラックが、自律走行するシステムです。鉱山の過酷な環境で、多数の建設機械や車両を24時間安全に稼働し続けるために、お客さまは最大限の注意を払います。そのお手伝いをするのがAHSです。通信衛星や各種レーダー、センサーなど、最先端の技術を組み合わせたこのシステムは、安全を追求するお客さまの多様化する要望に応えるため、さらなる進化を続けながら、「目指すべき姿」の実現に貢献しています。
鉱山の「ストックパイル」(集積場)において、集められた鉱石を大型ブルドーザーで整形しながら破砕機などの次工程に供給する作業(ストックパイルオペレーション)は、鉱山生産性を大きく左右する重要な業務である一方、危険な傾斜地での熟練作業が求められます。
コマツは、繊細なストックパイルオペレーションを、ブルドーザーに乗車せず遠隔でこの作業を操作するシステムを開発し、2023年よりブラジル顧客の鉄鉱山現場にて商用稼働を開始しました。
直接目視できない遠隔地からのブルドーザー操作は、映像や操作など、情報通信上の時間のずれが発生するため、特に斜面成型といった繊細な作業は、これまで困難なものでした。当システムでは制御信号の高速通信化や、ICTマシンコントロールと遠隔操作システムの組み合わせにより、2km以上離れた遠隔地からでも、安全かつ高度な作業性を実現しています。
導入現場でのトライアルにおいて安全性・生産性で目標を上回る成果を達成したことから、同鉱山では今後1年以内に導入する大型ブルドーザーをすべて遠隔操作システムによる操作可能な機械にすることを決定しました。
更に今後は、この遠隔操作システムを通じ、経験の浅いオペレータでも安全に作業できる環境の整備が期待されています。
コマツは、2020年から、自社開発した「KomVision人検知衝突軽減システム」を業界で初めて油圧ショベル※1に標準装備し日本国内市場への導入を開始しました。
当システムは、従来国内市場で標準装備されている機械周囲カメラシステム「KomVision」の機能を向上させ、カメラが走行または旋回起動時に機体の周囲にいる人を検知した場合、機体の発進を制御するものです。また、低速走行中に人を検知した場合、機体を停止させます。これらの機能により、走行起動時、低速走行時、旋回起動時に機体と人との衝突事故発生の抑制に寄与します。
当システムは、油圧ショベル「PC200-11」に標準装備として搭載するとともに、既存の従来型建機※2についても「KomVision」のソフト変更により当該システムのレトロフィットが可能となり、幅広いお客さまへ当システムをお届けすることで、建設現場の安全をサポートするシステムの普及を推進します。
当社では「KomVision人検知衝突軽減システム」の搭載機種を拡大し、2022年には7トン、30トンクラスの油圧ショベルへ標準搭載を開始しました。
また機械周囲カメラシステム「KomVision」は油圧ショベル、ダンプトラック、ホイールローダー、モーターグレーダーでの機種展開をグローバルに推進しており、2023年には当システムを搭載した大型油圧ショベル「PC950-11」を発売しました。
【KomVision人検知衝突軽減システム】
1.4台のカメラとモニターで、周囲の状況を確認(PC200-11の例)
4台の単眼カメラを用いて機体周囲をモニター上に表示します。また、機体の右側方、右前方、左側方、後方の画像に切り換えることができます。
2.人を検知したら、ブザーで注意喚起/機体停止
検知エリアまたは停止制御エリアで人を検知すると、モニター上にマーカー(黄色い丸または赤い丸)を表示すると共に、ブザーを鳴らすことによってオペレータに注意を促します。
本システムは、あらゆる条件で衝突を軽減する装置ではありません。性能には限界があります。
近年、トラックドライバー不足や環境負荷の低減を目的に、貨物鉄道輸送への転換(モーダルシフト)への関心が高まっています。その一方で、労働人口の減少に伴い、貨物駅では荷役作業に従事する熟練オペレーターの不足が課題になっています。
コマツは2019年よりフォークリフト操作のガイダンスならびにセミオート機能の先行研究を進めてきました。2023年4月には、日本貨物鉄道株式会社との間で、本機能をコンテナ用フォークリフトに搭載し、鉄道輸送における荷役作業の生産性と安全性の改善を図る共同開発契約を締結しました。
【フォークリフト操作のガイダンス機能・セミオート機能】
操作ガイダンス機能とは、複数のカメラ等センサにより、オペレーターが直接視認しにくいフォーク先端の位置をモニタに表示するとともに、コンテナが不適切な位置にあればオペレーターに警告を促すものです。
操作セミオート機能は、LiDAR※等の位置認識センサと独自の荷役対象認識技術を組み合わせることで、オペレーターはアクセル操作だけでフォークリフトを自動的にコンテナへ正対させ、フォーク位置を正確に自動制御することが可能になります。
先行研究において、本機能は周辺コンテナへの接触やコンテナ落下といった事故の防止や、オペレーターの作業負荷の軽減に大幅な効果が期待できることが確認されました。
今後、両社では本機能を搭載した量産車両の共同開発を進め、2024年度以降、全国の貨物駅への車両導入を目指しています。