コマツでは、国内の複数工場で使用するほぼすべての部品・資材について調達本部が担当する集中購買制度を採用しています。海外生産分に関しては、前述のコンポーネント区分のA、Bコンポを調達本部、Cコンポを海外現地法人の調達部門という分担をしています。また、欧米、中国、アジアの各拠点には海外調達センタを設置し、調達本部方針の浸透および各海外現地法人の調達活動との整合化を図っています。グローバルなサプライチェーンマネジメントおよびCSR調達の推進についても、この体制を活用して取り組んでいます。さらに、生産系グループ会社の調達部門とも定期的にCSR調達に関する情報交換会を開催し、共通の課題へ対するグループワイドの対応を進めています。
CSR調達を担う調達スタッフの育成も重要な課題です。グローバルで調達を進めるうえで忘れてはならない基本事項、特にパートナーである協力企業との対応の中で心がけるべき基本理念・行動規範については、コマツウェイの調達編としてまとめています。また、近年日本および海外にて、商取引、雇用・労働、環境、輸出入管理などにおける法令・規制が大きく変化しており、調達部門の担当者は、これらの動向を理解し、日々の調達活動に適切に反映していくことが求められています。2023年には調達部門の管理職・一般社員 計538名を対象にコンプライアンス・リフレッシュ教育に加え、人権教育を実施し、これまでのCSR調達に関する認識をアップデートするとともに、更なる意識向上の重要性を部門全体で共有することができました。今後も、コマツでは、新入社員から管理職まで各階層に合わせた集合教育やe-learningを通じて周知徹底を図っています。
「パートナーシップ構築宣言」は、大企業と中小企業の共存共栄を図るために、親事業者である大企業が、中小事業者との適正取引の下に、サプライチェーン全体での付加価値の向上に向けて中小事業者と連携・協力することを自主行動基準として宣言するものです。
コマツは、内閣府・中小企業庁及び各経済団体が推進する本活動に賛同して、2020年8月に当社の宣言を公表しました。
コマツは、下請代金支払遅延防止法、中小企業振興法の振興基準の各規定を遵守するとともに、ICTを活用した生産性向上および業務効率化の支援や各種の研修教育等の提供を通じて、協力企業の体質強化を今後とも支援します。
2022年7月の下請中小企業振興基準の改定を受けて、原材料価格、エネルギー価格及び労務費の変動の製品価格への転嫁を促進する書簡を副資材メーカを含む国内の全ての一次取引先へ発行し、購買価格の適正化を積極的に進めています。2023年も1,246社と価格協議し、必要な価格改定を積極的に実施しました。2024年以降も継続して年1回以上の取引先との価格協議を実施します。
また2023年1月には、協力企業との情報共有サイト「サプライヤポータル(KOMATSU Global portal)」を開設しました。本サイトでは、当社ユーザと協力企業ユーザの双方が日々の発注・生産に関するデータを共有し、データの加工・分析を容易にするツールを活用することで、生産・発注の変動状況や不定期に必要となる間歇生産部品の需要を事前検知したり、納期達成率や不良率といった管理指標のモニタリングすることが可能となります。2024年5月現在約1,100社にご利用いただいていますが、今後も機能の向上とコンテンツの拡充を図り、情報共有の強化に向けて取り組んでいきます。
「パートナーシップ構築宣言」に関しては下記のウェブサイトからもご覧いただけます。
コマツは、2017年3月からサプライヤ相談窓口を設置し、コマツグループの調達活動におけるコンプライアンス違反行為やその疑念のある行為に関する通報を受け付けしています。社内外に設置した専用窓口を通じて通報いただいた案件に対しては、中立的な立場の部門にて事実関係の確認、調査を実施し、速やかな是正措置につなげています。なお、通報いただいた協力企業に対して、通報したことを理由として、不利益な取り扱いをしないことを宣言しています。
サプライヤ相談窓口への通報実績
コマツの生産において、協力企業からの調達が当社製造原価に占める比率は高く、建設機械の代表的機種である中型油圧ショベルでは90%近くにも達しています。従って、事業活動の安定的な継続のためには、サプライチェーンにおけるリスクの早期把握とその対応が不可欠です。サプライチェーンにおけるリスクは、個々の協力企業の経営・SLQDCの状況、自然災害やパンデミック、国際的な貿易摩擦や輸出入規制など、その内容が多岐に渡っています。コマツでは特に重要なサプライヤに対し、定期的なリスクアセスメントを通じてリスクの見える化を行い、それらリスクの低減に向けた活動に取り組んでいます。建設機械業界では、2023年下期以降、建機マーケットは下降局面に入っており、コマツは、日本みどり会企業の負荷状況を月次でモニターし、各社経営への影響を注視し、必要な支援を実施しています。2024年より時間外労働の上限規制が運送業界へも適用開始となり、全国的な輸送能力不足の発生が懸念されます。コマツは2020年に、取引先や物流事業者との相互理解・協力のもと物流改善に取り組む自主行動宣言を表明し、国土交通省の推進する「ホワイト物流」推進運動へ参加しました。モーダルシフト活用による長距離輸送の削減や荷卸場レイアウトの最適化等によるドライバー労働時間の削減を目指し、適正な運賃設定に努めるなど、持続可能な物流の実現に向け継続して取り組んでいます。
近年多発、多様化する自然災害への対応として、2012年より日本国内を対象に、地震・津波・台風等の災害発生時に協力企業での被災状況と当社サプライチェーンへの影響を迅速に把握することを目的に、気象庁の災害情報と連動したサプライチェーン管理システムの運用を開始しました。このシステムでは、2次以降のサプライヤを含む7,662社 20,000強の事業拠点の立地と生産内容をデータベース化し、災害により発生が予測される供給障害リスクを見える化することで、的を絞った迅速な対応を可能とします。2024年1月1日に発生した能登半島地震においても、当システムを通じて被災リスクありと予想される協力企業に対し被災状況の確認を行い、支援要請のあった企業には当社から、建屋設備の保全担当者を派遣して迅速な災害復旧を支援いたしました。
2019年の台風19号による河川氾濫では、複数の協力企業が被災し、サプライチェーンに大きな影響が発生しました。この反省から、コマツのサプライチェーン管理システムと、国土交通省等が公表しているハザードマップとの連携を図り、協力企業の潜在的な立地リスクの事前把握に努めました。立地リスクを有する協力企業に対しては、溶接・加工プログラム及び重要な生産データ(BOM、ツーリングリスト、加工図、治工具図面等)のバックアップ保管を要請するとともに、各社のBCP対応状況に応じ当社側でも安全在庫の積み増しや代替発注先の確保等の対策を進めました。
2020年以降、広範な産業分野での半導体不足、新型コロナ感染拡大に伴うロックダウン、米中デカップリングや国際物流の混乱等によるグローバルサプライチェーンの寸断が深刻化しました。さらに、自動車や家電におけるモデルチェンジ期間の短縮化もあり、建機で流用している部品、特に電気・電子部品の突然の生産中止リスクが増加しています。これらの新たなリスクに対しては、流通段階を含めた在庫の管理強化、安定して入手可能な汎用半導体・部品への置換促進、重要部品に対する先行発注・内示範囲の拡大、在庫の積み増し等により対応を図っています。
また2023年春にはアジア調達センタを増強し、ASEAN加盟国・南アジア地区での現地調達化をさらに拡大するとともに、クロスソーシングにおいて特定地域からの調達に過度に依存するリスクを低減するために、グローバルでのマルチソース化(複数地域のサプライヤへの並行発注)も進めています。
サプライチェーンにおける情報セキュリティ対策も喫緊の課題です。コマツは、2021年に協力企業向けに情報セキュリティガイドラインを制定し、当社がサプライヤへ求める基準を明確にするとともに、国内みどり会156社を対象にe-learning形式での教育を提供しました。同時に自己診断チェックシートを用いた各社におけるセキュリティ調査を行い、課題が認められた取引先には個別のフォローアップを実施し、サプライチェーン全体でのセキュリティ対策強化を行っています。
情報セキュリティ自己診断実施状況
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|
自主チェックシート実施社数 | 156 | 156 | 156 |
e-lerarning受講者数 | 120 | 117 | ※- |
個別フォロー対象社数 | 12 | 14 | ※- |
コマツのCSR調達ガイドラインに対する協力企業側の認知を高めるために、みどり会会合や各事業所で開催する月次業務連絡会等の機会を活用して、コンプライアンスやBCPなどに関する啓発活動を実施しています。また、みどり会企業向けに発行する「CSR通信」では、コマツグループ社員向けの「みんなのコンプライアンス」に掲載のCSR関連記事や国内外の関連法規制の変更に関する情報などを紹介しています。
2021年度からは、サプライチェーンへのCSRのさらなる浸透を図るため、コマツも加盟するグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)が公表している標準アンケートツールを使用して、CSR活動に関するSAQアンケート調査を日本のみどり会156社を対象に実施し、153社から回答を得ました。当社のCSR調達ガイドラインについては、回答企業の95%から認知されていることを確認しました。また2022年度には、国内外みどり会企業計292社を対象に人権デューディリジェンスの一環として、人権リスク調査を実施しました。「国連ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする国際規範に基づき、「人権マネジメント」「労働安全衛生」「労働条件」など計11のカテゴリーにおける各社の人権取り組み状況に関し専用ウェブサイト上にて回答を収集しました。本調査では客観性を確保するため、設問の作成から結果分析までを外部有識者にて監修・実施いただきました。調査により明らかになった課題点と対応については各国語に翻訳したレポートを企業ごとに発行し、個別にフィードバックを行っています。本調査結果に基づき、CSRや人権配慮に対する意識を高めてもらいたい協力企業への個別フォローアップを行っていきます。
2023年度は国内みどり会企業5社を訪問し、外部有識者も交えて協力企業向け人権ガイドライン策定に向けて、インタビューを実施し、意見交換を行いました。各社意見を参考に、ガイドラインに織込みを図っていきます。
質問項目
No | テーマ | 質問項目 |
---|---|---|
1 | 人権マネジメント | 人権へのコミットメント、人権デューデリジェンスの仕組みの構築、苦情処理メカニズム |
2 | 労働環境と人権 | 差別や非人道的な処遇の禁止、児童労働の禁止および若年労働者への配慮、強制的な労働の禁止 雇用及び雇用関係、個人情報保護、労働時間の適正管理、福利厚生、賃金、労働者の団結権の尊重 |
3 | 労働安全衛生 | 労働安全衛生方針・マネジメント、職場の安全対策と環境改善、労働者の健康リスク対策 |
4 | コミュニティへの影響 | コミュニティへの影響 |