コマツは、みどり会会員企業に対しさまざまな側面からの支援を行っています。
これまでの主な取り組みは下記の通りです。
コマツは、日本みどり会のうち外注企業を主体とする99社を対象に、コマツの専門家による安全パトロールの継続実施、他社の労働災害・安全対策の共有と水平展開、マネジメントシステムの導入など、みどり会各社の安全活動体制の構築と活動のレベルアップ支援を行っています。これらの活動は中国みどり会においても展開しています。
また、協力企業においては人手不足から、外国人、高齢者、女性の現場就労が増えて被災するケースも発生しているため、作業標準書等の安全衛生関連資料の多言語化や、高齢者や女性にとって肉体的負担の少ない職場環境づくりなどの面での支援も進めています。
チェックシートによる書面調査および現場巡回を行い、特に、法令対応(届出、点検等)の遵守状況や現場での不安全箇所、不安全行動の有無についてチェックを行います。指摘事項については、再発防止対策を記入した対策書の提出を依頼してフォローします。2018年度からはチェックシートおよび評価基準の見直しを行い、みどり会対象各社の活動を全社同一基準で評価するとともに、各社の年次毎の活動レベルの向上度をフォローアップ(ワンランクアップ活動)しています。2023年度からはより現場に焦点を当てたチェックシートを作成し、同一目線にて各社の現場での安全活動のチェックを実施し、ボトムアップ活動を強化しております。
フォローアップの中では、現場での作業サイクルの定点観測やリスクアセスメントを共同で実施するといった活動を通じて、協力企業の現場監督者の育成にも努めています。
また、重大災害撲滅の観点から、自動ライン・自動機への安全装置の設置および運用状況、フォークリフト・クレーンの操作、および高所作業の作業標準の設定状況などに関し、定期的に統一チェックシートを用いて一斉点検を実施しています。特に自動ライン・自動機への安全対策については、自動機レベル向上活動(人に頼る安全担保から設備で押さえる安全担保へ)として重点的に活動を推進しています。
みどり会部会活動の一環として、同業種の視点による協力企業間の相互安全パトロールを実施しています。
また、業種ごとに業種に特有な観点(重量物のハンドリング、高温接触リスクなど)からのチェックも重視しています。
毎年6月に実施するコマツグループ安全衛生大会には、日本みどり会企業のトップが出席するのに加え、日中みどり会会員企業から選抜された優秀ゼロ災サークルの活動発表を行っています。
また、コマツ各工場に設置した安全道場を協力企業に開放し、各企業の社員の方にも危険擬似体感や危険予知訓練を体験いただくことで安全の意識の向上を図っています。
繰り返し災害が発生した協力企業は「特別安全活動対象企業」に選定し、各社の状況に合わせ具体的な改善内容を提案、各社にて作成した活動推進計画について共有し特別支援・指導を実施します。
各社に対し、活動のレベルアップのため、ISO、OSHMS認証を含む労働安全衛生マネジメントシステムの取得支援を行っています。2015年には独立した認定監査機関によるサプライヤーの安全衛生法令の順守状況の調査を目的として対象97社が中央労働災害防止協会の中小企業労働安全衛生評価事業を導入し、客観的評価に活用しています。指摘を受けた内容については、是正計画を策定し、コマツも協力企業からの要請に応じて、当社有識者の協力者も得て、改善指導・支援を提供します。
・2019-23年安全活動レベル評価結果の推移(みどり会外注99社116事業所)
・日中みどり会企業での災害発生件数推移
・ワンランクアップ活動の状況
コマツグループで実施しているコンプライアンス・リスク監査(CR監査)を、コマツがマイノリティ出資している協力企業16社に対しても2016年から実施しています。監査対象は、経理会計、労務管理、調達(下請法)、情報セキュリティの4分野です。関連法令の順守状況、業務規則・業務分掌・決定権限等の設定と運用状況の確認、関連帳票や現場の実査などを通じて、潜在リスクの洗い出しと是正措置を狙いとしています。
CSR調達を推進していくうえで、協力企業における自主的なコンプライアンス体制の構築が必須であり、そのためには ①ルール策定(会社としての行動基準制定)②推進体制の決定(責任者、実務推進者など)③内部通報制度の導入 ④社員の啓発教育の手順で進めるのが望ましいと考えています。この方針に沿って、日本みどり会の外注品企業を主体とする99社を対象に、当社での実施例の紹介、社員教育資料の提供等を通じて、体制構築の支援を実施し、2021年度末までに全社完了しました。
本支援活動完了後のフォローおよび大手の協力企業の状況確認に関しては、SAQアンケートにより実施していきます。
なお、2023年度には、日本みどり会156社において、労働関連法規ならびに環境分野での重大な違反は報告されていません。
CR監査での主な是正指摘項目(2016~2023年)
分野 | 指摘事項 | 対応 |
---|---|---|
経理会計 | 業務フロー・業務要領・決定権限が未設定、設定不十分 | 業務フロー・要領策定、見直し、実地棚卸の実施指導 など |
実地棚卸(固定資産含む)が未実施、定期的・タイムリーに実施されていない | ||
滞留資産の売廃却、強制評価損のルールが不明確 | 承認者と申請者を分ける など | |
社用印の管理、会計システムのパスワード更新、権限管理が不徹底 | ||
労務管理 | 一人親方に対する請負契約の不備 | 直接雇用への切り替え、タイムカード運用見直し、など |
就業時間管理の際の端数(30分未満)の取り扱い | ||
調達(下請法) | 注文書の必要記載事項不足(3条書面):仮単価、支払条件など | 注文書、補充文書の見直し、業務フロー見直し など |
支払遅延のリスクあり(受領後60日以内) | ||
有償支給材代価の早期相殺のリスクあり | ||
下請代金減額禁止の抵触(現金払い化に伴う割引手数料相当額の減額) | ||
発注取消時の相手方了承に関する証憑取得ルールが不明確 |
出資企業に対するCR監査の結果
コマツがみどり会会員企業に対してできる最大の支援は人材育成であるとの考えから、各階層に向けたさまざまなプログラムを提供しています(下表参照)。2020年度以降2022年度まで新型コロナ感染症拡大のため対面で行う大半の教育研修を中止せざるをえませんでしたが、その代替として、従業員教育の教材としても活用できるよう、オンライン会議システムを利用したリモート教育カリキュラムをみどり会各社へ提供しました。2023年は対面教育も復活し、リモートとの併用によるハイブリットスタイルも併用して教育を実施いたしました。
近年、特に注力している支援活動として「経営サロン」と「技能伝承活動」があります。経営サロンは、事業を継承して間もない若手経営者の人材育成を目的に、コマツ幹部と各社経営者とで、各社の強み弱みの現状分析と中期経営ビションについて意見交換を実施し、お互いの方針・考えのすり合わせをしながら共有化を図るものです。一方、技能伝承活動は、各社の現場技能の向上・伝承を円滑に推進するため、コマツのノウハウを展開しながら、各社の推進体制や技能評価制度の構築、核となる技能分野のインストラクタ養成等を支援するものです。
みどり会企業に対する教育等プログラム
対象階層 | プログラム | 概要 | 主な実績 | 2023年度実績 |
---|---|---|---|---|
マネジメント | 委託研修 | 経営者の御子息子女を5年以内の範囲で当社に受け入れて研修 | 1972年以降56名受け入れ | 0名 |
ミドルマネジメント研修 | 当社の次期幹部職向け研修を、各社の後継者候補に公開、7カ月間 | 2005年以降30名参加 | 1名 | |
経営サロン | 若手経営者から各社中期経営ビジョンを発表、審議し当社と共有化 | 2014年以降32社実施 | 4社 | |
管理職 | 管理職研修 | みどり会専用、年2回 | 毎年40名前後参加 | 35名 |
リーダ研修(現場管理職) | 毎年60名前後参加 | 35名 | ||
スタッフ | コマツ工専 | 30歳以下の生産技術・製造系リーダ候補が対象、全寮制2年間 | 2008年以降33名入学 | 3名 |
生産技術者教育 | みどり会専用、板金系・機械系、年1回5日間 | 毎年40名前後参加 | 29名 | |
技能者 | インストラクタ教育 | 各社の技能インストラクタ候補養成、30日間 | 2015年以降149名参加 | 8名 |
検査学校 | 検査技能+座学 | 随時開催 | 65名 | |
その他 | オールコマツQC大会 | みどり会から選抜して参加 | 毎年20社前後参加 | 6社 |
オールコマツ技能大会 | みどり会から選抜して参加 | 27名 | ||
オールコマツ安全大会 | みどり会から選抜して参加(ゼロ災サークル活動報告) | 毎年5社前後参加 | 5件 |
近年深刻化する人手不足への対応は、コマツやみどり会会員企業にとっても喫緊の経営課題となっています。コマツは、ICTを活用した生産現場・生産設備のネットワーク化(KOM-MICS)およびその活用による生産性向上・省人化を継続的に推進しており、人手不足への対策の一環として、これらの活動をみどり会各社に展開しています。コマツで開発した稼働率モニター(KOM-MICS Logger)等を通じて、各社の工作機械や溶接ロボットのコントローラから、設備の稼働状況や稼働条件といったデータを自動で収集し、ネットワーク上に集積します。それらデータを目的別に用意されたアプリを通じてパソコン上で加工・編集することにより、稼働率向上の課題を見える化し、改善方策の共同解析、実行につなげています。
昨今頻発する地震、豪雨、台風などの自然災害のみならず、新型コロナ感染症やサイバー攻撃など新たなリスクの脅威も顕在化し、サプライチェーンでのBCP体制構築の必要性がますます重要となっています。コマツは、2011年の東日本大震災を契機に、日本みどり会の外注企業を主体に104社を対象として、建屋・設備などの耐震・耐浸水対策等の支援を実施してきました。また、これらハードの対策に加え、BCPマニュアルの策定を通じた初動体制、ならびに早期の事業復旧を推進する体制の構築といったソフト面の対策強化も必要となります。2019年度から、みどり会104社を対象としたBCPワークショップを開催し、特に初動体制の構築支援を実施しています。
今後は、多くの協力企業がBCP推進上の課題と感じている、模擬演習等を通じた体制の定着化や、事業復旧に向けた事前準備(情報共有、自社生産能力の分散化、同業他社との協業検討等)などの支援を実施していきます。
自社のBCPを進める上での課題事項 (回答:みどり会87社)