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気候変動への取り組み(TCFD 提言に基づく情報開示)

C-19_気候変動への取り組み(TCFD 提言に基づく情報開示)

気候変動への取り組み(TCFD 提言に基づく情報開示)

コマツは、2019年4月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同し、気候変動がコマツグループに及ぼすリスクと機会の評価やシナリオ分析、ステークホルダーとの健全な対話を通じて、気候変動に取り組んでいます。

2021年11月に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求するとした合意文書が採択されました。さらに、2023年11~12月に開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、1.5℃目標達成のためにCO2などの温室効果ガスの排出削減を加速させることが合意されました。

こうした国際動向を踏まえ、コマツは従来の2℃および4℃シナリオに加え、2022年度から1.5℃シナリオを含む分析結果を毎年開示しています。

また気候変動課題に関連する推進体制として、社⻑を委員⻑とする「サステナビリティ推進委員会」を年1回(ほか必要時)開催し、グループ全体にわたるサステナビリティ施策の立案や推進状況、気候変動関連課題を含む環境・CSRに関する方針、重要な施策および活動を審議・決定し、その実施を促進しています。

サステナビリティ推進委員会は、気候変動関連課題(リスクと機会を含む)の評価・管理を担っています。同委員会の内容は年1回以上、取締役会に定期的に報告され、取締役会が監督・審議することで、経営レベルで必要な施策の実行を推進する体制としています。

リスクと機会の特定

事業に関連するリスクと機会の特定にあたり、「TCFD最終報告書」の事例を参照しました。対象範囲はコマツグループの事業全般とし、特に影響の大きい建設・鉱山機械事業を中心に、16のリスクと機会を抽出しました。さらに、収益などに影響する内的要因と、シナリオ下で想定される外的要因を評価したうえで、4つのテーマ(「資源需要の変化」「低炭素製品への移行」「製造コスト」「自然災害」)にグルーピングしました。

2020年のTCFD開示以降、これら4つのテーマにフォーカスして毎年更新を行っています。

気候変動におけるリスクと機会の特定

気候変動におけるリスクと機会の特定

シナリオ分析の前提条件

リスクと機会がコマツグループに与える影響を測るため、前述の4つのテーマに対してシナリオ分析を行いました。分析にあたっては、国際気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書「代表的濃度経路に関する将来シナリオ(RCP2.6、8.5シナリオ)」、同第6次評価報告書「SSP5-8.5」、国際エネルギー機関(IEA)「持続可能な開発シナリオ(SDS)」「公表政策シナリオ(STEPS※1)」「Net Zero by 2050(NZE※2)」を参照し、1.5℃、2℃および4℃シナリオを選択しました。

  1. STEPS(The Stated Policies Scenario):IEAが公表している将来見通しの一つ。各国政府が現在公表している政策や規制が今後も継続すると想定したシナリオ。
  2. NZE(Net Zero Emissions by 2050 Scenario):IEAが公表している将来見通しの一つ。2050年までに世界全体のCO2排出量を実質ゼロにすることを想定したシナリオ。

4つのテーマに関するシナリオ分析

① 資源需要の変化(コマツレポート2024 P56より)

資源需要の変化に対応した鉱山機械事業のポートフォリオの見直し

国際エネルギー機関(IEA)の「Net Zero by 2050(NZE)」(1.5ºC シナリオ)によると、石炭(ソフトロック)の需要は、脱石炭の流れを受け更に縮小すると予測されています。その一方で、クリーンエネルギー技術に不可欠なクリティカルミネラル(重要鉱物)の需要が伸長すると予測されており、世界的な電動化の進展などに伴い、鉄、銅、金といったハードロックの需要は堅調に推移する見通しです。世界情勢などが影響し、一時的に資源需要が変化することはありえるものの、資源需要は概ねこのような傾向で推移することが想定され、コマツグループでは、このような環境の変化に合わせて、ソフトロック向け坑内掘り鉱山機械の生産・サポート体制の再編、M&A によるハードロック向け坑内掘り鉱山機械のラインアップの拡充など、鉱山機械事業のポートフォリオの見直しを行っています。その結果、ここ数年の売上高に占める燃料炭の割合は徐々に減少し、銅の割合が増加しています。

図:1.5℃シナリオ資源需要予測(金額ベース)

1.5℃シナリオ資源需要予測(金額ベース)

図:コマツ鉱山機械事業の鉱物別売上高比率

コマツ鉱山機械事業の鉱物別売上高比率

② 低炭素製品への移行(コマツレポート2025 P60より)

電動建機の安定的な開発に向けたバッテリー戦略

EV向けバッテリーの需要予測

EV向けバッテリーの需要予測

1.シナリオ分析

今後、商用車や自動車、2輪車などを含むEV(Electric vehicle:電気自動車)の販売は、アメリカ、欧州、中国を中心に拡大し、EV向けバッテリーの需要も急速に増加すると見込まれます。

(STEPSの見込みでは、EVバッテリーの需要は2023年と比較して2030年までに4.5倍、2035年までにほぼ7倍に増加すると推測されています。)

2.リスク

  • 世界的なバッテリー需要の増加により、建機向けバッテリーが調達困難となる
  • バッテリー価格の上昇によるコスト増加

3.機会

  • 自社開発により信頼性のあるバッテリーを安定供給する

4.戦略

コマツは、建設・鉱山機械向けのバッテリー開発に向けて、2023年度にバッテリーメーカーAmerican Battery Solutions社(ABS社、アメリカ)を買収し、バッテリー開発から生産技術に至るノウハウや知見を蓄積しています。さらに、さまざまなパートナーと協働し、コマツの有する多様な機種・サイズの製品ラインアップに対応する最適な動力源の開発にも取り組んでいます。今後は、ABS社のバッテリーを搭載した機種の拡大を進めるとともに、電動建機に関わるキーコンポーネントの内製化も加速することで、電動建機のライフサイクルに対応するバリューチェーンビジネスの確立にも取り組んでいきます。

③ 製造コスト(コマツレポート2024 P58より)

シナリオ分析:1.5ºC シナリオにおける炭素税の影響

炭素税は、1.5ºCシナリオでは2ºCシナリオよりも税率が上がり、先進国だけでなく新興国においても2030年時点で高い税率となり、その後も上昇することが予想されています。炭素税などの政策による炭素価格の上昇は、将来的な製造コストの増加リスクである一方、自社のCO2排出削減に取り組むことは、炭素税に関わるコストの削減につながります。

なお、炭素税は機械を使用する際の燃料の価格にも影響するため、コマツは低炭素製品開発などによる製品稼働時のCO2の削減に取り組むことで、お客さまの負担低減にも努めています。

図:炭素税の予想($/ton-CO2

炭素税の予想($/ton-CO2)

図:2030年の自社排出目標を達成した場合の炭素税予測

2030年の自社排出目標を達成した場合の炭素税予測

④ 自然災害(コマツレポート2024 P59より)

シナリオ別の大雨発生頻度と強度の増加予測

コマツグループでは、洪水リスク調査を3年ごとに見直しており、気候変動の進展を踏まえた継続的なリスク管理を行っています。過去より日本やインドネシアなどでたびたび洪水被害を受けており、定期的に洪水リスク調査を行うことでリスクが高い拠点を把握し、必要な対策を講じています。IPCCの第6次報告書では地球温暖化の進行に伴い、将来、大雨の頻度、強度はともに劇的に増えていくと予測しており、それを受けて、コマツも2023年に洪水リスク調査を行い、リスクが高い拠点を特定し、財務影響の評価を行いました。

1.シナリオ分析:10年に1度の大雨発生の頻度と強度※1

【過去】
1850~1900年
【現在】
1℃
【将来】地球温暖化の水準
1.5℃ 2℃ 4℃
10年当たりの発生頻度(中央値) 1回 1.3倍 1.5倍 1.7倍 2.7倍
強度(湿潤化※2 +6.7% +10.5% +14.0% +30.2%

温暖化1.5℃の予想

  • 1.5℃の地球温暖化では、アフリカとアジア、北米および欧州のほとんどの地域で、大雨および関連する洪水の強度が増加し、より頻繁になると予想される。

温暖化4℃の予想

  • 1.5℃の場合と比べて干ばつと大雨および平均降水量の変化の規模が増大する。
  • 太平洋諸島や北米および欧州の多くの地域で大雨および関連する洪水が激化し、より頻繁になると予測される。
  1. IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書政策決定者向け要約暫定訳SPM.6(文部科学省および気象庁)をもとに作成
  2. 湿潤化:大気中に含まれる水蒸気の割合が増加していくこと

2.リスクについて

ハザードマップなどを活用し、国内外の拠点における操業停止時の財務影響額を試算しました。

想定する被害
および影響
財務影響(単年度)
現状の被害額予想
対応策
洪水による生産拠点の操業停止に伴う売上高減少 204億~553億円※3
  • これまでに日本の工場と洪水リスクの高い海外の工場では大雨対策を実施(例:国内は100mm/h降雨を想定した対策)
  • 4℃シナリオを想定した場合、洪水による被害が激甚化する可能性があるため、現在の対策を定期的に評価し、必要に応じて新たな対策を実施する。

※3 日本以外の拠点の試算:日本拠点のハザードマップを参考に浸水深を想定。また日本の浸水区域の被害係数などを適用して試算

3.機会について

今後、地球温暖化が進み洪水の被害が激甚化すれば、国土強靭化に向けた対応などが活発となる可能性があり、建設機械の需要の増大につながります。

環境管理部