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リスク管理

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リスク管理

コマツグループでは、グループ全体の持続的発展を脅かすあらゆるリスク、特にコンプライアンス、気候変動を含む環境、品質、災害、感染症、情報セキュリティ、反社会的勢力などを主要なリスクと認識し、これらに対処すべく対策を講じています。

1.リスク管理の基本方針と体制

  • 事業の継続と安定的発展を確保していくことをリスク管理の基本方針とするとともに、リスクを適切に認識し、管理するための規程として「リスク管理規程」を定めています。
  • リスク管理に関するグループ全体の方針の策定、リスク管理体制の見直し、個別リスクに対する対策実施状況の点検・フォロー、リスクが顕在化したときのコントロールを行うために、「リスク管理委員会」を設置しており、年に1回の定期開催のほか、必要に応じて開催しています。2022年度は2月の定期開催と、6月、10月に開催しました。リスク管理委員会の委員長は社長、副委員長は総務管掌役員が務めます。リスク管理委員会の事務局は、リスクマネジメントを専門で行う総務部リスクマネジメントグループが務めます。
  • リスク管理委員会は、審議・活動の内容を定期的に取締役会に報告します。2022年度は、社外の有識者から客観的な助言・提言を取り入れることを目的としたインターナショナル・アドバイザリー・ボード(IAB)でリスク管理について議論し、アドバイザーから助言や提言を受けています。
  • 重大なリスクが顕在化したときには緊急対策本部を設置し、被害を最小限に抑制するための適切な措置を講じます。
  • 海外も含めグループ全体でのリスク管理体制のさらなる充実を図るため、リスク報告ルートやマニュアルの整備などを推進しています。  

リスク管理体制

リスク管理体制

2.事業等のリスク

事業等のリスクとしては、有価証券報告書に記載のとおり、以下を認識しています。

  1. 経済、市場の状況のリスク
  2. 為替レートの変動のリスク
  3. 金融市場の変動のリスク
  4. 各国の規制のリスク
  5. 環境規制・気候変動関連等のリスク
  6. 製造物・品質責任のリスク
  7. 提携・協力・企業買収等のリスク
  8. 調達・生産等のリスク
  9. 情報セキュリティ・知的財産等のリスク
  10. 自然災害・事故・感染症等のリスク
  11. 戦争・テロ・地政学リスク

3.新興リスク

中期的(3-5年)に影響を受ける可能性があり、かつ重要性の高い新興リスクは以下の通りです。

リスク名 リスクの説明 事業へのインパクト リスク低減アクション
地政学リスク コマツはグローバルで239拠点(日本32、海外207)を有し、150を超える国、地域で事業を展開しています。このため、特定地域において社会的、政治的、軍事的な緊張が高まり、分断が生じると、当社のサプライチェーン(生産、販売、サービス)に影響を及ぼします。

また、最先端技術に関する輸出規制強化も、当社の一部事業に影響が生じます。

ロシア・ウクライナ情勢をはじめ地政学的な不確実性は増しており、緊張が加速し戦争や紛争等に至った場合は当該地域の事業の縮小を余儀なくされ、売上減少、資産の評価減、顧客離れによる市場の喪失等、今後の事業に影響が生じる可能性があります。

ロシア・ウクライナ情勢に鑑み、コマツはロシアに対する本体、部品・コンポーネントの出荷を停止し、ロシアの生産現法も現地での稼働を停止しています。CIS(ロシア、ベラルーシの他、非制裁対象6か国を含む)の事業環境は不透明な状況が続いており、今後さらに天然資源が豊富な中央アジアを中心とする非制裁対象6か国においても顧客サポートが出来ない状況が継続すると、将来の事業へ影響を及ぼす可能性があります。

また、当社エレクトロニクス関連製品には最先端技術が導入されており、その一部は輸出貿易管理令に基づく輸出規制品に該当します。現時点での影響は軽微ですが、今後規制が更に強化された場合、本体販売の機会損失とサービスサポートへの支障が生じ、当社事業に影響を及ぼす可能性があります。


CISのうち非制裁6か国は、天然資源が豊富な中央アジアに位置する重要な市場です。このためカザフスタン共和国に100%子会社であるKomatsu Central Asia LLP(以下、新会社)を設立し、中央アジア地域での販売・サービス機能を担うことで、一層の販売・収益拡大を図っています。

輸出貿易管理令の改正に関しては、社内に専門部署を置き、情報を速やかに収集するとともに、その内容を関係する事業部門と共有して適時適切に対応する体制としています。

また最先端技術の輸出規制については、規制対象地域以外の市場開拓や、商品の差別化機能の強化と長寿命モジュールによる能力向上、部品事業の収益性改善による競争力向上により、売上減少分を他地域へシフトし、収益源の分散と拡大を図っています。


低炭素/低エミッション製品の開発に関するリスク 当社はCO2排出量を2030年までに2010年比50%削減することを中期経営計画目標とし、2050年にカーボンニュートラルを目指すと宣言しています。この進捗を確認するために、基準年(2010年度)と2022年度の製品の性能を比較し、燃費、作業効率の改善によるCO2削減貢献効果を算出したところ、2022年度の製品は基準年に比べ、21%のCO2削減を達成しました。
しかし、今後、低炭素/低エミッション製品やソリューションの開発が予定通りに進まなかった場合や競合他社から競争力のある製品が発売された場合、またはEVや水素などの製品を市場投入した際に調達・生産・サービス体制の確立が十分に出来ていなかった場合は、低炭素/低エミッション製品市場において、コマツの製品やソリューションが選ばれない可能性があります。
低炭素/低エミッションの製品は、将来、欧州や北米、日本市場での需要が見込まれます。建設機械・車両セグメントは当社の売上高の93.0%を占めていますが、その地域別売上構成では欧州や北米、日本市場が全体の46%(2022年度)を占めています。また、鉱山機械の顧客である大手資源企業は脱炭素への取り組みを加速させており、環境配慮型の経営姿勢を打ち出しています。今後、当該リスクが顕在化した場合は製品やソリューションが競争力を失われ、事業計画に多大な影響を及ぼし、またその影響は長期化する可能性があります。 機械の作業効率の向上や燃料消費量の削減、ディーゼルエンジンなどの内燃機関からハイブリッド、電動化、燃料電池などよりクリーンな動力源への移行を進めています。電動ショベルについては「PC30E-5」(2020年4月)、「PC01E-1」(2022年3月)を本田技研工業株式会社(以下、Honda)との共同開発により日本国内市場に導入しました。さらに「PC01E-1」の系列拡大機種となる「PC05E-1」をHondaと共同開発し、2023年度には日本国内市場への早期導入を目指します。
また、電動式フォークリフトについても、従来の2.5トン、3.0トンクラスの電動式フォークリフトに大容量リチウムイオンバッテリーを搭載した「FE25G-2」、「FE30G-2」を2022年12月より発売しました。これにより、さらにお客様のCO2排出削減に貢献していきます。
また、植林・造林・育林・伐採のあらゆる工程の機械化を進め、循環型事業として森林の再生サイクルを支えることで、気候変動の緩和、そしてカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
さらに、コンポーネントを再生・再利用するリマニュファクチャリング事業についても、社会のCO2削減に貢献する循環型ビジネスと位置づけ、強化していきます。
鉱山オペレーションにおけるCO2削減についても、世界有数の大手資源企業であるリオティント、BHP、コデルコ、Bolidenの4社と2021年に「コマツGHGアライアンス」を発足しました。最初のターゲットモデルとして、いかなる動力源でも稼働可能な超大型ダンプトラックの開発を進めています。
また、坑内掘りハードロック向け鉱山機械においては、「マイニングTBM(Tunnel Boring Machine:トンネル掘削機)」を活用し、「No Blasting(発破の必要がない掘削), No Batch(バッチ処理をおこなわない連続掘削), No Diesel(ディーゼル不使用)」という、環境配慮型の坑道掘削新工法を具現化するためのトライアルを2024年より開始することを、コデルコと合意しました。お客様の現場での環境性向上に貢献するための革新的な当該技術の早期導入を目指します。
顧客へのソリューション提供に関するリスク 当社はスマートコンストラクション、鉱山の自動化(AHS等)、データドリブンビジネス(KOMTRAX等)のソリューションビジネスを推進していますが、顧客のニーズに合致したソリューションを市場が要求する時期までに開発できない場合や、コマツが開発・提供した技術が顧客の評価を得られない場合には、新しい市場での競争力を失う可能性があります。 競合他社に対して優位性を維持できるソリューションが提供できない場合、当社の経営成績に影響を及ぼし、かつその影響が長期化する可能性があります。 ソリューションビジネスを成長させていくため、2021年4月に(株)NTTドコモ、ソニーセミコンダクタソリューションズ(株)、(株)野村総合研究所と共に、新会社(株)EARTHBRAINを発足しました。世界の建設現場における働き方改革が求められるなか、安全性、生産性、環境性の向上をめざし、建設業界におけるDXの推進に取り組んでいます。その一例として、EARTHBRAINと共同で、建設機械向けの遠隔操作システムを開発し、2023年3月よりお客さまへの提供を開始しました。本システムはSmart Construction FleetおよびSmart Construction Retrofitとの連動により、作業効率最大化と、更なる安全性向上が期待できます。
鉱山現場の自動化推進に関しては、英資源大手Anglo American社が保有するチリの銅鉱山向けに無人ダンプトラック運行システム(Autonomous Haulage System以下AHS)の導入を開始しました。2024年までに超大型ダンプトラック930E 計62台のAHS稼働を予定しています。コマツとして、Anglo American社へのAHSの導入は初めてとなります。
また、坑内掘り鉱山向けのソリューションとして、鉱山向けの通信デバイスと坑内測位による最適化プラットフォームのプロバイダーであるMine Site Technologies Pty Ltd社を買収し、坑内掘り分野における鉱山機械の自動化・遠隔操作化などのテクノロジーソリューション領域を進化させ、お客さまの現場の安全性・生産性の向上により一層貢献していきます。
その他、機体の周囲にいる人をシステムにより確認し、走行または旋回起動時に人を検知した場合、機体の発進を制御する「KomVision人検知衝突軽減システム」について、2022年より搭載機種を拡大しました。

4.当社の具体的な取り組み

(1)地政学リスクへの対応

当社グループは開発・生産・販売等の拠点を世界各国に設け、グローバルに事業を展開しており、特定地域における社会的、政治的、軍事的な緊張の高まりは、当社の事業へ影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、多様化する地政学リスクがもたらす資源価格変動や輸出入規制、サプライチェーンへの影響等を最小限にすべく、各国の政治・経済情勢や法規制の動向を確認し、状況の分析および対応を行っています。特に、ウクライナ情勢に関しては、危機管理方針に沿って、社長をトップとする緊急対策本部を発足させ、社員とその家族の安全の確保、各国の輸出規制への対応を実施しています。

 

(2)新型コロナウイルス感染症への対応

コマツグループは、社会インフラを支える事業(Essential Business)に従事するお客さまへの責任を果たすため、感染防止策を徹底したうえで、お客さまへの製品・部品・サービスの継続的な供給を行っています。2022年度においても、グローバルで社員の感染状況を把握するとともに、各国政府の方針に基づいて対応を行いました。日本国内では、政府および都道府県の方針に従い、社員の感染防止に努めるとともに、生産拠点および協力企業の稼働状況を都度把握し、生産への影響を抑制しました。

 

(3)事業継続計画(BCP)の定着と訓練の推進

コマツでは、重要業務を継続または短期間に復旧するため、事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)を策定しています。国内の各拠点において初動対応訓練を実施し、リスク管理レベルおよび災害対応力の向上を図っています。災害・事故発生時に社員や家族の安否を迅速に確認するための「安否確認システム」や、グループの各拠点に「広域無線機」などのツールを導入し、定期的な安否報告訓練や通信訓練の実施を通じて、グループ全体としての緊急連絡機能の強化を推進しています。また、国内拠点においては、ハザードマップなどに基づいておのおので課題を設定し、実際の災害時にも的確・迅速に行動できるよう、毎年BCPのローリングを行っています。さらに、昨今の自然災害の頻発化・被害甚大化に鑑み、各生産工場においては、おのおのの計画に基づき、建屋・設備の耐震補強の推進や、集中豪雨への対策を拡充しています。コマツグループ各拠点のBCP強化はもとより、協力企業のBCP構築・運用向上支援を通じたサプライチェーンの体制強化にも注力しています。今後も、多様化するリスクに対応可能な、柔軟かつ持続性のあるサプライチェーンを構築するため、BCP活動を推進・強化してまいります。

<2022年度の取り組み事例>

これまでも国内の各拠点で地震や台風などのテーマを各々で設定し訓練を行っておりましたが、それぞれの拠点間での連携の強化及び、さまざまな災害を想定して訓練することでの対応力の強化を目的として、2022年度は富士山噴火を全社の共通テーマとしてBCP訓練を実施しました。以下は富士山の噴火により降灰被害が想定される東京都の本社と神奈川県の湘南工場での訓練の実施状況です。

①湘南工場(神奈川県平塚市)

生産現場の降灰対策、戦略在庫の保有、他工場への生産移管等の対策を検討しています。

②本社(東京都港区)

ビルのユーティリティ維持のための備えを検討しています。加えて本社においては、災害が発生しても継続しなければならない重要業務を洗い出し、対策の確認を行っています。

(4)経済安全保障への対応

世界のさらなる政治的分断により各国の規制が強化される可能性があります。当社グループでは、経済安全保障推進法を始めとする経済安全保障関連・諸規制の動向への対応として、経済安全保障担当執行役員を配置し、情報の収集と分析にあたっています。

5.CR監査の実施

コマツではリスク管理活動の一環として、2008年度よりコンプライアンス・リスク監査(CR監査)を実施しています。これはJ-SOX監査(金融商品取引法に基づき実施している、財務報告に係る内部統制の評価)ではカバーできない分野や、会社における潜在的なコンプライアンス・リスクの見える化(特に法令遵守状況の確認・評価)を目的としたもので、社内専門家チームによる内部監査を、コマツ及び国内外の関係会社に加え国内のオーナー系代理店並びに協力企業を対象として実施しています。この活動を通じて、各社・各部門の管理レベルとコンプライアンス意識のさらなる向上を目指しており、事業環境の変化に合わせて手法を改善し、CR監査の品質を高めるよう進めています。

2022年度の実施分野は以下の通りです。
(1)安全、(2)環境、(3)労務、(4)経理・会計、(5)品質保証・リコール、(6)車検・特定自主検査(法令上義務付けられた検査)、(7)輸出管理、(8)情報セキュリティ、(9)独占禁止法、(10)下請法

なお、上記分野を横断するCR監査として、販売会社の各拠点に対して実施する、現場指導会(安全、環境)、販社拠点監査(経理・会計、労務、情報セキュリティ)、海外事務所に対して実施する駐在員事務所監査(経理・会計、労務、情報セキュリティ)があります。

CR監査の実施状況

CSR室, 総務部