コマツは、対人地雷の被害に苦しむ地域において、地雷処理から復興までのコミュニティ開発を目的とした支援活動を行ってきました。コマツの専門技術やモノづくりに関する知恵を結集して開発した対人地雷除去機や建設機械を活用し、2008年に認定特定非営利活動法人「日本地雷処理を支援する会(JMAS)」をパートナーとしてカンボジアでの活動を開始、2016年からはラオスでの活動も開始しました。
地雷が埋められた危険な土地から安全で安心して暮らせる土地へ、そして道路や小学校の建設によってさらに付加価値が高められた土地へ。今後も、コマツの本業である建設機械を通じた支援により地域全体の自律的な復興に寄与する活動を進めていきます。
スタートは、広大な土地から地雷を除去することだった――。戦争や内戦の影響でカンボジアには地雷の残された地域が数多く存在し、今でも死傷者が絶えない。中でも北西部のタイ国境付近は対人地雷の埋設地域が広大で、開発が進められない状況になっていた。荒れ果てた農地や閑散とした村に人々が戻ってくるように。まずは埋められた地雷を除去しよう。踏みしめる大地を安全にすることが、私たちの最初の仕事だった。
農地や道路の復興で、人々が暮らしを取り戻す――。私たちの仕事は、地雷を除去したら終わりではない。農地や道路の復興など、その土地に役割を与えることだ。カンボジアの農業の2大作物は、コメとキャッサバ。田んぼの凸凹をなくし効率的に収穫するため、ICT技術で農地を均平化できるブルドーザーを活用した。すると、コメの収穫量が約2倍になった。また、用水路や水不足解消のための溜池を造成。これまで農業のできなかった乾季でも用水路に水を引けるので、喜ぶ農家も増えた。道路と道路を繋ぎライフラインを整備すると、人々が村に定住するようになる。出稼ぎをしていた家族が再び農業を営み、築いた道を人が行き来する。村が活気を帯びてきた。
「勉強することは、あなたの未来をつくること。」これは、地元の小学校の校長先生が生徒に話した言葉だ。地雷原にある学校が遠くて通学を諦めた子どもがいた。校舎が老朽化して勉強もままならない学校もあった。私たちが小学校建設に着手して十数年。第1校や第2校を卒業し、今では大学生になった子どももいる。小さな蕾が、大きく花開いていくように思えた。地雷原だった場所に人々が集まり、学校ができて生徒が学ぶ。ひとりひとりがそれぞれの夢を見つけていく。だから子どもたちの笑顔が、こんなにきらきら輝いているんだ。
カンボジアでこれまでコマツが手掛けた小学校は全部で10校(2023年4月時点)。どれも元は地雷原だった場所に建てられた⼩学校ばかりで、経済的に恵まれない家庭が多い。しかしながら、その中でも徐々に⼤学⽣が誕⽣していることから、2023年度より、コマツが建てた⼩学校の卒業⽣を対象とした奨学⾦制度を新たに開始。初年度となる2023年度は6名が対象となった。
2016年からはラオス北部シェンクワン県における不発弾処理事業の支援も始まりました。
ラオスは、国土の3割以上が不発弾に汚染されており、その多くがクラスター子弾で子どもや農民が毎年被害にあっています。 ラオスの不発弾処理部隊であるUXO-LAOと日本のJMASが中心となって行っているクラスター子弾処理の機械化事業に対しても、コマツは機材の無償貸与と技術支援を行っています。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、さまざまな制約が加えられる中でも、現地での不発弾事業は計画的かつ継続的に展開されました。コマツは、オンライン会議を通じたリモート支援や、日本からの補給部品の供給等によって、現場での活動をサポートしています。
コマツでは「出前授業」として、日本国内の学校に赴き、小学生から大学生までの幅広い世代の若者に対して、地雷除去プロジェクトの活動を紹介しています。これまでに累計で約99回、約7,500名に対して授業を行いました(オンラインでの開催含む)。
ある高校の1年生向けに行ったオンライン授業では「今回のお話を聞いて、海外で仕事することはたとえ言語や文化が異なっても、とても楽しくやりがいが感じられるのだなと改めて思うことができました。今まで、私自身が海外で仕事することに興味があり、言語や文化の違いに少し不安を持っていたのですが、今回のお話を聞いて、将来仕事をすることがとても楽しみになりました。そして、将来自分が興味のあることを活かすことは、とても大切なのだと気づくことができました」との感想文がありました。
未来を担う子どもたちが世界平和や自分の将来、生き方について考えるきっかけとなるように、コマツは今後も出前授業を継続してまいります。
年 | 活動内容 (下線は、国際条約および日本政府の活動) |
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1998年 | カンボジア地雷原用の潅木除去機を開発 |
1999年 | オタワ条約発効(対人地雷禁止条約) |
2002年 | 日本政府が、対人地雷除去機を武器輸出三原則等の例外とすることを表明 |
2003年 | 経済産業省とNEDO※の助成金事業で、対人地雷除去機を開発(下図①) |
2004年 | 外務省の支援により、アフガニスタンで現地テストを実施 |
2006年 | 外務省の支援により、カンボジアで現地テストを実施 |
2007年 | アフガニスタンに1号機を導入(日本政府ODA) |
2008年 | NPO法人“JMAS”と、カンボジア復興プロジェクトを開始 |
2009年 | NPO法人“JMAS”と、アンゴラ復興プロジェクトを開始 |
2010年 | オスロ条約発効(クラスター爆弾禁止条約) |
2015年 | 対人地雷除去機(不発弾処理用)を開発(下図②) |
2016年 | NPO法人“JMAS”と、ラオス復興プロジェクトを開始 |
2017年 | アンゴラ復興プロジェクトを終了 |
2019年 | カンボジアに9校目、ラオスに1校目の小学校を建設 |
2020年 | カンボジアで農業CSRプロジェクトを開始 |
2022年 | カンボジアに10校目の小学校を建設 |