CSR重点分野を整理する過程において、第三者としてNPO法人である米国BSR(Business for Social Responsibility)からの支援 をうけながら、以下のステップを踏みました。
まずは、数多い社会的課題のなかから建設・鉱山・産業機械メーカーとしてコマツに関連あるものを抽出し、次にそれぞれの社会的課題について「コマツの事業にとって重要であるか」について評価しました。事業への重要度を理解するために、社内役員や海外現地法人の経営トップへのインタビューも実施しています。 さらに、それぞれの社会的課題が「コマツが大切にするステークホルダーにとって重要であるか」についての評価を行いました。 ステークホルダーへの重要度を評価するに当たっては、政府・政策担当者や業界専門家、メディア、顧客(建設・鉱山関連)、サプライヤーなどによる発言や発行物などを参考にしました。また、ステークホルダーの視点を反映するためにBSR社の助言も取り入れています。
コマツの事業にとっての重要性を横軸に、ステークホルダーにとっての重要性を縦軸に、社会的課題の評価結果を整理しました。
右上に配置された社会的課題は、コマツの事業とステークホルダーの双方にとって重要な社会的課題(=CSR優先課題)と位置づけられ、その中からコマツのCSR優先課題として次の16項目を選定しました。これらの優先課題に注力することにより、本業を通じた最も有効な社会的活動を遂行できるものと考えます。
商品・サービス・お客さま |
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環境 |
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社員 |
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人権 |
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倫理とガバナンス |
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地域社会 |
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優先課題をベースに、社内やBSRとの議論を重ね、3つのCSR重点分野を導き出しました。
コマツのCSR重点分野
これらを達成するために、3つの分野それぞれについて、「本業を通じた活動」として中期経営計画に沿った重点活動を定めました。またコマツは本業に加えて、事業を行う地域に対する「社会貢献活動」を行うことも、企業の責任であると考えています。社会貢献活動も、本業で培ったノウハウを活かすテーマに力を入れており、以下のような活動を行っています。
CSR重点分野 | CSR重点活動 | |
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本業を通じた活動 | 社会貢献活動 | |
生活を豊かにする -社会が求める商品を提供する- |
• 持続可能なインフラ整備と資源開発および循環型の 地球環境保全(リマン・林業)に貢献する商品・サービス・ ソリューションの提供 • 自動化などのイノベーションを通じたバリューチェーン 全体での生産性向上・効率化、安全確保、環境負荷低減(CO2排出 削減、再生可能エネルギー比率の向上) • 技術と信頼性を持って、よりよい地球と未来を実現する ダントツバリュー(顧客価値創造・最大化)の追求 |
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人を育てる | • 生産性・技能レベルが高く、多様な人材育成 • 持続可能な現場の実現を支援するダイバーシティ・ グローバル人材の強化と育成 • バリューチェーン横断型人材の育成 |
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社会とともに 発展する |
• ステークホルダーとの協業による社会的課題の解決 • コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス、 人権リスク対応の徹底などの責任ある企業行動 |
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企業のESG(Environmental, Social, Governance)への取り組みが重視されているということに鑑み、2016年4月にコマツが発表した中期経営計画では、「ESGを重視する」ということを明言しました。中期経営計画にESGを織り込む上で、コマツの事業・CSRとの関係性を再度検証し、どのような方向性を示すのか、また国際社会が目指す共通の目標として国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」と、コマツのCSRがどのように関連するかといった議論を重ねてきました。
SDGs(持続可能な開発目標)
2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で提示された指針。17のゴールと169のターゲットで構成されている。http://www.ungcjn.org/sdgs/index.html
これらの議論をもとに、SDGsを構成する17の「SDGゴール」とそれに紐付く169の「SDGターゲット」をコマツのCSR重点分野・重点活動と照合しました。具体的には、1)相互関連性と2)その関連性の深さの観点で評価を行いました。
【表1:コマツのCSR重点分野・重点活動とSDGゴール】
例えば、コマツは「生活を豊かにする」という重点分野の中の重点活動の一つとして「インフラ整備と生活の向上に貢献する製品やサービスの提供」を掲げていますが、各SDGゴールとSDGターゲットに対して、次のように照合しました。
<例1>SDGゴール 1 (貧困の根絶)
<例2>SDGゴール9 (インフラ産業技術)
上記の手順で全てのCSR重点活動と169のSDGターゲットとの関連性を一つずつ判定しました。マス中の数字は、関連性のあるSDGターゲットを示しており、関連性が大きいものは濃い青色で表現しています。
コマツのCSR重点活動と関連性が最も大きい5つのSDGゴールとして、以下が選定されました。各SDGゴールは相互に関連し合うと認められているため、コマツはこれらの5つに注力することで、包括的にSDGsの達成に貢献していきます。
表2では、表1で選定された5つのSDGゴールとコマツの事業・CSR活動との関係性を示しています。
【表2:SDGsとコマツの事業・CSRとの関係性】
今後は、さらに多くの社内外のステークホルダーと情報を共有し、PDCA (Plan-Do-Check-Act)サイクルを回しながら議論を深めていきます。ステークホルダーに価値をもたらす活動に取り組み、進捗状況について報告を行います。