当社では、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」など国際的な人権原則に則り、すべての事業活動に関連する人権を尊重し、人権への負の影響が生じることの防止・緩和措置、また、人権への負の影響を発生させた、または関与していたことが明らかになった場合の是正を図るため、以下のプロセスを整備・実践しています。
【コマツグループの人権マネジメントシステム】
人権リスクの評価(アセスメント):国内法や国際的な人権規範の要請にもとづく設問項目により、潜在的なリスクの特定を継続実施
社内部門・手続きへの統合と適切な措置:リスクアセスメント評価結果に基づく改善活動(特定されたリスクの防止・低減のための適切な措置と社内部門・手続きへの統合)
追跡調査(モニタリング): リスクの防止・低減施策の実施状況および効果の把握と再発防止
情報開示:リスクアセスメントの実施概要や特定されたリスクへの対処に関するウェブページや各種報告書での情報開示
コマツは、2019年9月に「人権に関する方針」(2023年9月改定)を策定し、グループ社内や、サプライヤー(調達先企業)、販売・サービス代理店を含むビジネスパートナーを対象に、国際基準に準拠した人権の尊重をグローバルな組織全体に適用して事業を行うことを宣言しました。この人権方針は「コマツの行動基準」(2024年改訂)に反映し、全世界のグループ全社員に徹底しています。
2023年9月にサステナビリティ推進委員会での審議ならびに社長による最終決裁を経て、「人権に関する方針」を改定しました。コマツの「存在意義」や「サステナビリティ基本方針」を織り込むとともに、強制労働、児童労働の禁止や、結社の自由・団体交渉権の尊重を条文化するなど、会社としての姿勢をより明確に表明しました。改定版は13か国語に翻訳し、コマツグループ各社および協力企業(サプライヤー)、販売代理店への周知を進めています。
人権マネジメントの具体的な活動は、人事・調達・労働安全・マーケティングなど各部門の業務と密接に関わっていることから、サステナビリティ推進本部を事務局とし、各部門と連携のもと推進しています。
人権に関する方針・施策・活動はサステナビリティ推進委員会で審議・決定し、その討議内容は、少なくとも年1回、取締役会に報告しています。
事業活動における人権課題を特定し、予防し、軽減し、対処するデューデリジェンスを、社外専門家の協力を得て継続的に実施しています。
【これまでに実施した人権デューデリジェンスの概要】
2014年 | 社外専門家であるBSR社(Business for Social Responsibility)の支援を得ながら、グローバルに展開する建設・鉱山・林業機械事業を対象に、人権課題のリスクアセスメントを実施。 |
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2017年 | BSR社の協力を得て第二回人権リスクアセスメントを実施。実施に当たっては「世界人権宣言」ならびに国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を参照。 |
2020年 | 社外専門家であるベルギーの企業ネットワーク団体CSR Europeの支援を得ながら、建設・鉱山・林業機械事業のダウンストリームビジネス(本体・補給部品の販売)を対象に、全世界を対象とする体系的な人権リスクアセスメントを実施。当社の事業特性を踏まえ、「人種・民族・出身国による差別」「強制労働・結社の自由・公正な労働条件」等多面的なリスク評価を行い、事業ごと、地域ごとに潜在的な課題の特定と優先順位付けを実施。 |
2021年 | コマツの人権課題の優先順位を整理し、サプライヤーおよびコマツグループ社内を対象とした書面調査と、ダウンストリームビジネスにおけるインパクトアセスメント(実地調査)の実施を決定。 |
2022年 | - 外部コンサルタントの支援を得ながら、コマツグループならびに主要サプライヤーを対象に人権ウェブ調査を実施。 - CSR Europeの支援を得ながら、南アフリカにおいてダウンストリームビジネスにおけるインパクトアセスメント(実地調査)を実施。 |
2023年 | - 「人権に関する方針」を改定。 - 全グループ社員を対象とした「ビジネスと人権基礎教育」と、購買担当者を対象とした「調達担当者教育」を実施。 - 本社マーケティング担当者との「意見交換会」を地域毎に開催。 - 国内のサプライヤーを訪問し、各社の取り組み状況や、新たに準備を進めている人権ガイドラインのドラフトについて意見を交換。 |
当社では引き続き、事業全般にわたるアセスメントを継続的に実施することで、人権リスク・課題の洗い出しを強化していきます。
a. 社内・サプライチェーンの人権デューデリジェンス
コマツグループおよびサプライチェーンへの展開に対するアセスメント
2020年度から2021年度にかけては、サプライチェーンへのCSRのさらなる浸透を図り、ガイドラインの定着を再確認するため、日本国内のみどり会※サプライヤー156社に対し、人権を含むCSR活動に関するSAQ(Self Assessment Questionnaire)アンケートを実施し、CSR調達ガイドラインの認知状況をはじめCSR活動の取組み状況を確認して、調査結果の個別フォローアップを行いました。
2022年度には、国内外のグループ会社全社ならびにみどり会サプライヤーを対象に人権ウェブ調査を実施しました。本調査では客観性を確保するため、外部コンサルタントの支援を受け、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする国際規範に基づく設問の作成や結果分析を行っています。
調査の結果、重大な人権侵害は確認されませんでしたが、人権方針や苦情処理メカニズムの周知未徹底などの課題が見受けられたことから、リスク緩和措置の一環として、フィードバックレポートを全回答先に配布し、結果共有を行いました。
DATA グループ会社ならびにサプライヤーの人権アセスメント実績
実施概要 |
2022年度人権ウェブ調査 | |
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2022年10月~2023年2月 | ||
調査内容 | 11カテゴリー、全106問 | |
調査対象数 | コマツグループ 48カ国84サイト※1 (グループ全社) |
みどり会サプライヤー 4カ国※2292社 |
計376 | ||
回答率 | 100% |
72.9% |
サプライヤー訪問・面談
2022年度の人権ウェブ調査(コマツグループ・協力企業(サプライヤー)対象)で判明した課題の実態を把握するため、2024年3月、日本国内の協力企業(サプライヤー)5社を訪問し、各社の代表者や担当者との意見交換を行いました。現在、コマツでは人権に関する要求水準づくりを進めています。今回の訪問で寄せられた意見を活かし、実情に即したより具体的で実効性のある要求水準を定め、これからのデューデリジェンス評価基準とすることを目指しています。
スクリーニング
当社は全世界の事業において、サンクションリストなどで指定された相手先との取引をチェックし規制するスクリーニングシステムを構築しており、国際法規制などに基づく(禁輸等の)措置の遵守を図っています。
紛争鉱物への対応
コマツは、CSRの観点から、コンゴ民主共和国(DRC)および周辺諸国産の「紛争鉱物」について、採掘などにおいて人権リスクがある原材料を自社製品に使わない取り組みを継続しています。この方針を「グリーン調達ガイドライン」として協力企業各社へ案内するとともに、各社の協力の下「紛争鉱物」の原産国調査を実施しました。対象となる鉱物については、継続的にRMAP※などのプロセスを活用し調査を行っています。またリスクが懸念される対象鉱物が拡大傾向にあるなか、各国の法規制などを見極めながら対応を進めています。
英国現代奴隷法への対応
現代の奴隷制を防止する英国法である「Modern Slavery Act 2015 (現代奴隷法)」への取り組みとして、英国コマツ(株)(Komatsu UK Ltd.)のウェブサイトにて公開している" Slavery and Human Trafficking Statement"を改定しました。当ステートメントは、事業活動とサプライチェーンにおける奴隷労働や人身取引の人権リスクが発生する可能性を考慮し、いかに対応していくかを報告するものです。
リスクへの措置の一つとして2023年度にビジネスと人権に関して全社員向けの基礎教育と、調達担当者向けの基礎教育を実施しました。今後も継続して実施予定です。
リスクアセスメントについては、繰り返し実施するとともに、洗い出したリスクについても継続的にフォローアップしています。2022年度に実施した調査においても課題のフォローアップを実施予定です。
「コマツの行動基準」において、守秘の対象や企業秘密にある場合を除き、情報の公開を積極的に行うことを表明しています。人権に関する問題についても、積極的な情報開示に努め、透明性と公平性の向上を図ってまいります。
b. ダウンストリームビジネスにおける人権デューデリジェンス
当社は、ダウンストリームビジネス(製品本体・補給部品の販売・サービス)における人権対応を考慮し、「責任ある販売」へのアプローチの構築を目指し取り組みを継続しています。
[2022年の活動] 南アフリカにおけるインパクトアセスメント(実地調査)
前年までに実施したリスクアセスメントの結果を踏まえ、2022年より、当社の事業が人権に与える影響のインパクトアセスメント(実地調査)に着手しています。
2022年9月には、南アフリカを調査対象地とし、CSR Europeの支援を受けインパクトアセスメント(実地調査)を行いました。実地調査は、コマツ本社ならびに南アフリカの販売・サービスを統括するコマツ南アフリカ(株)が連携し、事前に実施した机上調査に基づき、南アフリカにおける当社事業を取り巻くさまざまなステークホルダーとの対話を実施しました。調査において大きな人権リスクは確認されませんでしたが、人権について集中した議論がなされ、顧客との間で課題・価値意識を共有し理解を深める成果が得られています。
DATA ダウンストリームインパクトアセスメントの実績
2022年度 | |
実施地 | 南アフリカ |
面談数 | 個別面談:7社・組織 (顧客:5、NGO:2) ステークホルダーとの対話:12社・組織 (顧客、潜在顧客、NGO、鉱山業界団体、商工会議所、職業訓練機関、大学准教授など) |
コマツは、本社に、人権問題についての違反についても報告可能な「グローバル・コンプライアンス・ホットライン」を設置・維持し、コマツグループ全社員に周知しています。また、人権に関する方針・法令に違反し、または違反したと思われる事実を知った場合は、誰もが匿名で連絡できる通報先を設け、調達活動におけるコンプライアンス違反行為やその疑念のある行為に関する通報を受け付けしています。また、これらすべての通報に対し、コマツグループの企業とそのすべての社員等が守るべき「コンプライアンス5原則」のなかで、「報告や通報を妨げたり、報告・通報を理由に不利益な取り扱いをしてはならない」ことを定めています。
加えて、バリューチェーン全体における人権問題について、主に社外からの問い合わせを広く受付け対応するため、一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に加入しました。
2023年度は、グループ全社員を対象とした「ビジネスと人権基礎教育」および調達担当者を対象とした「調達担当者教育」を実施しました。教材を13か国語に翻訳し、コマツグループ各社に配布しました。また、コマツ本社マーケティング担当者との「意見交換会」を地域ごとに5回に分けて開催。責任ある販売に向けたアプローチについて、これまでの取り組みを紹介し、意見をヒアリングしました。今後も人権に関する教育を継続的に実施し、コマツグループ全体での人権意識の向上を図っていきます。
地域社会の活性化(社会貢献活動)
地域経済の活性化も、潜在的な人権課題を修復する一助となるものと考えています。当社は技能を通じた人材育成を強みとしており、従来より実施している世界各地のトレーニングセンターでの人材教育や、社会貢献活動として実施する地域職業訓練校でのカリキュラム提供などにも、さらに注力していきます。これにより、マシンの安全な展開がサポートされ、事故や誤用のリスクがさらに軽減されるものと考えています。
人権デューデリジェンスの具体的活動事例
当社は、潜在的リスクがあるとされる地域であるミャンマーについて、2019年以降、社外専門機関を交えたデューディリジェンスを実施し、問題点の特定と対処のための議論を行いました。
その結論を踏まえ、2019年以降、当社はミャンマー国内の翡翠鉱山向け鉱山機械本体の販売をしないことを決定しました。あわせて鉱山機械のメンテナンス子会社のオペレーションを停止済みであり、法人も清算中です。引き続き、ミャンマーの販売代理店や外部の専門家とさらに連携し、事業における人権の尊重を強化するための効果的な対策を講じます。